日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: B4-5
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口頭発表
小学校家庭科の「くらし方のくふう」の学習を通して 
-友人との交流が学習活動に与える影響-
小泉 万里子*三野 たまき
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抄録
目的
 近年,子どもの友人とのコミュニケーションはメールやインターネットなどの普及により,間接的な方法を多く用いるようになったと言われている.久野(2007)によれば,子どもは他の子どもとの話し合いによってお互いの学びを重ね合わせ,自らの考えを深め,新しい考えをつかめるようになるという.子どもたちの学習を深めるためには,友人と直接コミュニケーションする機会を授業に取り入れる必要があると我々は考えた.そこで本研究では,子どもが友人と直接コミュニケーションしながら交流する授業を設定し,これが学習活動に与える影響を明らかにした.またこの結果を踏まえ,児童自らが考えて学習を深めるための,教師の支援の一提案を試みた.
方法
 調査対象者は長野市内のS小学校6年生の1学級(37名)であった.彼らに2時間続きの家庭科の授業を2回,計4時間実践した.授業形態は,友人との話し合いから課題を達成する調べ学習で,児童自らが学習方法を選択した.児童に2種類の提出物〔ワークシート2回(94.6%の児童は2回,5.4%の児童は1回提出),ICレコータ゛ーの記録2回(43.2%の児童は2回,27.0%の児童は1回,29.7%の児童は未提出)〕を,2回の授業毎に提出させた.提出物の合計数から彼らを4ク゛ルーフ゜に分け,便宜上,4つ提出した児童をA(n=16),3つをB(n=10),2つをC (n=9),1つをD(n=2)児童とした.(1)ワークシートの課題に対する回答率(教師の要求回答数を基準とした相対値)を求め,ク゛ルーフ゜間で比較した.(2)ワークシートの行数・文字数とその比,自らの考えを他児童に説明して得るサインの獲得率(教師の要求サイン数を基準とした相対値),記述内容を着眼点・理由・期待できる効果とその合計の記述数(これを“学習の深まり”とした)に分けて調べた.“学習の深まり”を目的変数とし,これに影響を与える因子を従属変数とした時の重回帰分析を行った.また,ク゛ルーフ゜ごとに,回答率,記述量・内容,サイン獲得率等の7項目間の相関係数を算出した.(3)サインの授受による児童間の交流関係を調べた.(4)2回目のICレコータ゛ーの記録に着目し,2組の児童の対話の内容を調べた.
結果・考察
 (1)D児童は他児童に比べ回答率が有意に低いものの,A~C児童間では有意差がなく,97.1%の回答率であった.(2)ワークシートIの“学習の深まり”YIは,回答率(aI)と文字数/行数(bI)から重回帰式が得られた〔YI= 0.422aI+0.354bI(r=0.814)〕.なお,ワークシートIIの“学習の深まり”YIIは,YI,回答率(aII)と文字数/行数(bII)から重回帰式が得られた〔YII=0.516YI+0.382aII+0.280bII(r=0.824)〕.このことから,学習を深めるためには,回答率を上げることと,ワークシートへの記述を丁寧に取り組ませる必要があることが分かった.またワークシートIではAとC児童の回答率とサイン獲得率との間に有意な正の相関関係があったことから,友人のサインを得るために回答を仕上げたと考えられ,交流学習の効果があったと考えられた.一方ワークシートIIでは,C児童の行数とサイン獲得率との間に有意な正の相関関係があったものの,A児童は記述量とサイン獲得率の間に有意な負の相関関係があった.これはワークシートIIの課題がC児童には適度であったが,A児童には物足りなく,記述の充実よりも,サイン獲得に時間を費やしたと思われる.(3)どのク゛ルーフ゜の児童でも,サイン獲得率はワークシートIよりIIで有意に増加した.このことから,児童は2回目の授業の方がより友人に自分の成果を説明し,交流していたと考えられる.一方A児童は自らのク゛ルーフ゜内でサインを授受し,D児童に与えなかった.つまり関わる友人に偏りがあると言える.B児童はどのク゛ルーフ゜の児童ともサインを授受していたことから,関わりやすい存在であると考えられた.(4)2名のA児童の対話は授業に関連した発言が多いいものの,相手の意見を聞かずに自分の意見を押し通す場面が多かった.A児童であってもこのようにコミュニケーション上に問題がある児童がおり,今後彼らには他の児童の意見を聞く,つまり「教わる」体験をする場を設ける必要があろう.また他児童に比べて有意に低いD児童の回答率を上げるためには,関わりやすい存在であるB児童との交流の場を設定する必要があろう.さらにC児童の回答率がサイン獲得率と有意な正の相関関係にあったことから,楽しめる要素を課題に盛り込むことが効果的と考えられた.
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© 2010 日本家庭科教育学会
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