日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: B4-6
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口頭発表
生涯を展望して生活をよりよくしようとする生徒の育成
中学校家庭科におけるアクティブ・エイジングの学習
*角間 陽子
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抄録
【目的】
 新学習指導要領における中学校家庭科の目標には、「これからの生活を展望して」という文言が加えられている。生活は現在の生きる営みであると同時に、過去から現在、未来へとつながる連続したプロセスでもある。人生が長期化するなかで、生涯にわたって生活の質を追求する、すなわち「アクティブ・エイジング」を実現できることが求められている。したがって、アクティブ・エイジングは現在、高齢期にある人だけでなく、すべての世代を対象としているのである。本研究では、自分自身の現在の生活を省察して課題を見出し、生涯を展望して生活をよりよくしていこうとする生徒を育成するためのエイジング学習プログラムの開発を目的として、「若年世代の主たる活動の場でアクティブ・シニアが中学生を支援する」類型の世代間交流活動と連携させた中学校家庭科の学習について構想し、授業実践を通してその効果を検討した。
【方法】
(1)長野県佐久市の中学校3年生70名を対象として、2009年10月上旬、無記名質問紙法による集団調査(事前調査)を実施した。調査内容はエイジングクイズ、加齢に対するイメージ、高齢者との交流についての意識、生活への向き合い方などである。
(2)2009年10月15日、「総合的な学習の時間」における世代間交流活動(老人会の方々との交流会)の参与観察を行った。
(3)交流会の終了直後、まとめの時間に事前調査とほぼ同内容の事後調査を実施した。
(4)2009年12月3日、「めざそう!アクティブ・エイジング」を題材とした授業を行った。授業では、交流した高齢者が元気でいきいきしていられる理由を話し合うことでアクティブ・エイジングの実現にはそれまでの生き方が関与していることに気づき、2年次の学習をふりかえることで現在の自分がこれまでの生活の積み重ねによってあることを再認識できるようにした。その後、これからの生活を見通しながらアクティブ・エイジングに向けて今の自分にできることを考えた。
(5)授業後に行った調査から、エイジング学習の効果を検討した。
【結果】
(1)エイジングクイズの正答率を事前調査と事後調査で比較すると、5割以上であった項目の数が3項目から5項目に増加した。また、項目2以外の5項目で事後調査の正答率が事前調査を上回っており、特に項目5では20.0ポイント、項目1では17.2ポイント上昇していた。さらに各生徒の得点を算出して平均値の差の検定を行った結果、事前調査は3.271、事後調査は3.729となり、5%の有意差が認められた。
(2)加齢に対するイメージは、特に項目3と項目5で事後調査が事前調査よりポジティブな回答が増加した。一方、学習後調査では特に項目1と項目7が事後調査に比してポジティブな回答が増加した。また、各生徒における事前-事後、事後-学習後の変化について分析したところ、8項目のうち6項目で1%の有意差が認められた。
(3)生徒が自分自身の生活に対してどのように向き合うことが望ましいと考えているかを質問したところ、10項目のうち「人との共生」の1項目でのみ、事後調査と学習後調査が同値となったものの、それ以外の9項目は事前調査より事後調査で、事後調査より学習後調査で平均値が高くなるとともに、事後調査と学習後調査との間で1%の有意差が認められた。
 交流会のみでも生徒は加齢イコール喪失ではないと感じているものの、授業によって、交流した高齢者がアクティブ・シニアとなり得るような年の重ね方をしてきたことを認識し、高齢者の永続的な理解が深まったといえる。アクティブ・エイジングを学習することで、生徒は自分自身もまたエイジングの主体であることを自覚し、現在の生活に対する意識を高め、主体的に向き合う態度を涵養することができたといえる。
 なお、本報告は平成21年度科学研究費補助金基盤研究(C)20530797の一部である。
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© 2010 日本家庭科教育学会
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