抄録
[目 的]平成20年に改訂された小学校新学習指導要領においても、家庭科は「教科」として位置づけられた。しかし、そのねらい・原理から考えるならば、「教科」は、子どもが学校でしか学べない学習であり、その学習による能力は、「教科」でしか育成できないものである。ところが、小学校家庭科は第5・6学年にしか課されていない。しかし、家庭科が教科として学校教育に位置づけられている以上、家庭科でしか身に付けられない能力の育成は、全学年の子どもに保障されなければならない。本継続研究は、以上の問題意識に基づき、昭和31年度版小学校学習指導要領で説明された「家庭科を第5学年からしか学べない理由」を事実に基づいて検討し、小学校低学年からの家庭科学習実践の可能性を理論的・具体的に実証することを目的としている。平成20年度例会では、米国N.J.州初等家庭科プログラムにみられるカリキュラム構成原理を分析し、小学校低学年からの家庭科学習の論理的可能性を明らかにした。平成21年度大会では、米国初等家庭科プログラムを参考に、わが国の小学校低・中学年で試行する「食育」をテーマとした3次構成の投げ入れ授業としての家庭科学習指導計画「なぜ、食べるのか?」を、科学的認識の獲得を目的とする「教授書試案」の形式で開発し、平成21年度例会では、第1次「なぜ、食べるのか?」を小学校第2・4学年で実践した結果を報告してきた。本発表では、第1次の結果及び平成18年度から取り組んできた「食育」に関する研究結果から再構成した第2次の計画と、それを小学校第2・4学年で3学期末に実践した結果を分析し、小学校低学年からの家庭科学習実践の可能性を検討したい。
[方 法]教科教育学研究の「事実づくり研究」の方法に基づく教授書開発研究
[結 果]1.授業計画第2次「何を食べているのか?」の再構成
(1)取り上げる概念と事例の選択;第1次「なぜ、食べるのか?」での子どもの発言・記述をみると、例えば「ごはんを食べたから大きくなった。」「いろいろな食べ物を食べたから大きくなった。」のように、自分が生活の中で経験的に獲得した言葉で思考をしており、「ごはん」「食事」「料理」「食べ物」などの用語に混同がみられた。本研究では、自分の食生活を分析させるために、食物学の概念「食品」「調理」「食物」「食事」を選択し、子どもの学校での昼食である「学校給食」を事例として分析させていく過程で、それらの概念を獲得させることとした。
(2)食品のグループ分けと本次の到達目標の設定;平成19年度例会で西谷が報告したように、我が国の家庭科では、小学校で3群、中学校で6群、高等学校で4群の食品群を用いており、同一の食品でも教育段階が変わると別の食品群に分類される現象が生じている。この問題に対応し、さらに「栄養素」を学んでいないという学習段階をふまえ、本次の到達目標「私たちが食べている食品は、_丸1_パン・めし・麺、_丸2_いも、_丸3_肉・魚、_丸4_卵、_丸5_豆、_丸6_牛乳、_丸7_海藻、_丸8_野菜、_丸9_果物、_丸10_その他の10グループに分類することができる。」を設定した。
(3)ゲームに用いる食品カードの作成;第5学年以降の「自分が1日に食べる食品の種類・量」に繋がる食品分類ゲームを行うため、平成19年度例会で西谷が報告した「1年間の小学校の学校給食に用いられた食品の調査結果」「作成した新規『食品群』」に基づき、子どもが日常食べる52食品を選択した。表には食品の写真、裏にはその量の食品を摂取した場合のサービングポイントを記入した52枚のカードを作成した。
2.授業計画第2次「何を食べているのか?」の実践と結果の分析;平成21年度3学期末に、岡山市立西小学校第2学年(男子19名、女子15名、計34名)、吉備中央町立大和小学校第4学年(男子11名、女子4名、計15名)を対象に、学級担任の西谷圭二・信清亜希子が授業を行った。その授業記録(VTR、子どものワークシートの記述)に基づき、「家庭科が第5学年からしか学べない理由」から、1)この学習で子どもはどのような知識を獲得したのか・2)その中で、他教科の基礎的な理解と技能は応用されたのか・3)1)2)には、どのような子どもの発達段階の違いがみられたのか、の視点を設定し、分析を行った。