日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: P2
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ポスター発表
学校の食卓
-特別支援学校におけるランチルーム-
*梅原 清子
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抄録
【目的】こんにち、国公私立学校において学校給食の実施率は94%まで普及しているが、給食をランチルーム(以下、LR)で食べる学校はまだ多数派とは言えない。たとえばW市の公立小学校でLRを保有するのは2割程度にすぎず、また保有されていても、稼働率の低さや全校生が使用できる規模でないなど一般に十分機能していないきらいがある。食育の生きた教材としての学校給食は、栄養や調理、食材についてだけでなく、食べる「場」のありようを考えることも重要ではなかろうか。とくに、知的障害のある人のバリアフリーでは、目的に応じた空間が準備されゆったりと落ち着いて食事をとれることが必要と考えられる。そこで、学校給食にふさわしい食事環境を実現するため、LRに関する特別支援学校関係者の意識を検討する。
【方法】W大学附属特別支援学校教員、同校保護者、W県下の特別支援学校12校の栄養士・調理員(以下、給食職員)の3者を対象とした。合計95人に対してLRに対する価値20項目を5段階で評価するアンケート調査を実施し、あわせて給食職員から県下特別支援学校におけるLRの設置・活用状況の概要についても情報収集した。調査時期は、2010年1~3月である。
【結果および考察】県下の特別支援学校では12校中1校を除き学校給食が実施されているが、LRの設置は7校、近々開設1校である。なお未設置校の給食職員には、LRは必要であると認識されている。また開校時に開設された学校では、当初より児童生徒数が増加し、全員が利用するには狭すぎるという意見がみられた。いずれも在籍者が100名を超える大規模な学校で、学部・学年に応じた利用制限が行われている。狭隘そのほか施設面でのゆとりのなさに対し、子どもの障害特性からくる事故を危惧する声もあった。  LRについての各項目の評定値は概して高く、肯定的に評価されている。逆に教室で食べるほうがよいとする項目は評定値が低い。それらの傾向は、教員・給食職員よりも保護者のほうに顕著にあらわれる。日々LRを利用し子どもに給食指導を実践している教職員に比べ、当事者として利用することの殆どない保護者は概念的な捉え方をするためであろう。また、「授業の場と別でホコリなど少なく気持ちよい」「食事の場をきちんと意識し食事の雰囲気を楽しむ」の項目は、評定値が高く、保護者、教職員の別なしに多くの人が認めるLR給食のメリットといえる。食事空間の教室からの分離は、清潔な環境で食事できるだけでなく授業から食事モードへ切り替えを明白にして、知的に障害のある場合など行動しやすくなる。「だれとどこで食べるか選べる」は子どもが能動的に食事の場を創ることにつながる。これについては全体の評定値はあまり高くないが、食卓への着席方法を生徒に選ばせている高等部担任の教員には高くなっている。その他、学級以外の交流、衛生的配慮、給食調理室等に関して、教員や給食職員の現状の条件に応じた特徴的な点がうかがえる。さらに、これら20項目の得点結果から因子分析を行ったところ、4因子が抽出された。それらは、LRを通して子どもの食生活の可能性の拡大、給食実施上の管理の合理性、教職員の関与への期待、そして学級としてのまとまりと広がり、である。  以上のように、給食の場としてのLRに対して支援学校関係者から高い評価を得ていることが分かった。授業と食事の場を分離して食べることを楽しむ、マナーを守りながら食事・食材について意識する、食事のシチュエーションを自己管理するなどへの支援は、いずれも教室給食では難しいといえよう。支援学校児童生徒の自立を支え生活を豊かにするという教育的意図に基づいて、LRの施設・設備やその配置、使い方という食事環境について、今後いっそうの検討と整備が課題となる。もちろんLRの充実は、支援学校だけでなくすべての学校において望まれることであろう。 (調査にあたっては、和歌山大学附属特別支援学校・村上富美子栄養教諭の助力をいただいた)
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© 2010 日本家庭科教育学会
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