抄録
はじめに
小学校家庭科の学習では、生活的自立の基礎を築くために児童生徒に生活スキルを習得させることを目標の1つにしている。しかし、中学校や高校教師からは「小学校で学習した知識や技能が定着していない」という指摘がある。そこで、本研究では、中学1年生と3年生を対象にアンケート調査とボタンつけテストを行い、2年前の結果と対照し、小学校家庭科の被服製作用語の知識や技能が学年進行とともにどのように変容するかを明らかにすることを目的とした。
方法
1.アンケート調査
1)調査時期および調査対象
【調査対象】中学1年生75名(男子36名、女子39名)、中学3年生143名(男子69名、女子74名)で、全員が2007年の調査対象者である。以下、中1、中3とする。
【調査時期】中1は2009年5月に、中3は同年12月に実施した。
2)調査内容および方法
小学校家庭科教科書から、被服製作に関する用具、技能等の用語計39項目について「知っている」または「知らない」の2段階で回答させた(以下「用語に関する知識」とする)。これらの用語を[用具]、[布・型紙]、[縫製方法]に関する語群に分類したところ、それぞれ15、5、19項目からなった。技能を伴う[縫製方法]に関する語群の17項目については、「できる」または「できない」についても回答させた(以下「技能の自己評価」とする)。
2.「ボタンつけ」テスト
1)調査時期および調査対象;上記のアンケート調査と同時に行った。
2)調査方法
_丸1_試料;綿ブロード,縫い針(がす針9号),糸(綿手縫い糸、30番)を用いた。
_丸2_テスト方法;「布に二つ穴ボタンをつけなさい」と指示し、テスト時間は10分とした。
_丸3_評価方法;評価基準により被服製作に習熟した指導者3名で評価した。
結果および考察
1.用語に関する知識
中1の3つの語群の「知っている」割合は2007年の小5の時より高くなり、中でも[縫製方法]と[布・型紙]に関する語群の増加が大きくみられた。高い順に語群を並べると、小5の時には[用具]>[縫製方法]>[布・型紙]の順だったが、中1では[縫製方法]>[用具]>[布・型紙]の順になった。
中3の3つの語群の「知っている」割合も中1と同様で、2007年の中1の時より高くなったが、上昇の幅は中1ほど大きくなかった。高い順に語群を並べると、中1も中3の時も[縫製方法]>[用具]>[布・型紙]の順と同じになった。
2.技能の自己評価
中1の「できる」割合は2007年の小5の時より大きく上昇した。男女別にみても同様で、男子では約60ポイント、女子では約50ポイント上昇した。中3の「できる」割合は、2007年の中1の時より高くなったが、上昇の幅は中1ほど大きくなかった。男女別にみると、男子では約5ポイント、女子では約8ポイント上昇した。
3.「ボタンつけ」テスト
中1の「ボタンつけ」テストの平均得点は5.4点となり、2007年の小5の時の4.8点より上昇した。中3の「ボタンつけ」テストの平均得点は5.2点となり、2007年の中1の時の4.1点より上昇した。
以上のことより、中1と中3の生徒の知識や技能は2年前よりも向上したといえる。