抄録
【研究の背景と目的】
筆者は第53回大会において、住居領域の授業のなかで3Dソフトを活用することは、児童生徒の住生活に対する関心を高め、自立した生活を考える有効な方法となり得るとの概要を発表した。それは筆者のそれまでの授業経験、またソフト制作販売会社が実施してきた小・中・高校生や家庭科教諭対象のソフトの使用法に関する講習会での反応に基づいている。そして受講生の多くは「授業が楽しかった」と記述し、教師自身からも「楽しい授業ができた」「ソフトを使ってみたい」等の感想が得られ、3Dソフトを活用することで住居領域を楽しく指導することの可能性を十分に読み取ることができたからである。
また報告では、今日まで住居領域の授業において家庭科教諭が直面している ●住居にかかわる専門的内容の勉強不足 ●プライバシー侵害への不安 ●適切な教材教具の不足や授業研究の不足、といった難題についても、3Dソフトを活用することにより様々な負担や恐れなどを軽減・削除出来るのではないかと予測した。
本研究の目的は、さらに3Dソフトを授業に導入することを前提とした具体的な教材研究と、関連する課題等について考察することである。
【研究方法】
一般に授業における教材研究とは _丸1_教える内容について、正しい知識や技術を習得する _丸2_本時の目標(題材・領域・教科の目標を含め)を達成すべく、生徒観を勘案し、時間を配慮して学習指導案を作成する _丸3_適切な教材教具を準備する 等であろう。しかも授業においては_丸1_~_丸3_の関連性が不可欠である。
3Dソフトを授業に導入するためのポイントとして A住居領域のねらいと内容、評価に関すること B授業の方法に関すること C3Dソフトに関すること D学習環境に関すること 等が挙げられる。
【研究結果と考察】
A●目標を明確化し、各自テーマを設定する。完成するまで目標を見失わないように随時働きかける。●住生活への関心を高め、また持続させるように、作品鑑賞や資料配布のほか、日頃の生活経験談も大切にする。
B●はじめに知識・技術の基礎基本について学ぶ。●見本用の課題を試みソフトの特徴を把握する。●教師は机間指導で気が付いたことを全体に伝え、注意事項を共有する。●各自設計上のポイントと作品を発表し、級友の作品を鑑賞する。●設計上の条件および取組み中に生じた問題への対応についてまとめ、作品と共に提出する。●評価は総合的に行う。
C●ソフトの特徴を理解し、使用法を習熟する。●事前に陥りやすい問題をおさえ、それぞれの対処法を把握しておく。
D●ハードとソフトの導入には費用がかかることから、適時学校関係者に家庭科教育の目標を理解してもらうべく根気強く働きかける。●パソコン教室及時間割への組込み等については、他教科教員と協調する。
【まとめ】
3Dソフトの活用を前提とした授業については、今年度の大会においても発表した通り ●住生活を楽しく学ぶことができ、住生活への関心が高まった●個々の学びと相互の学びとにより、級友の家族・家庭生活を自然に受け容れることができた●自分の個性を認識し、その表現に関心が持てた、など平面図や座学では味わう事のできない効果をもたらすことができた。以上の経験から得たものを言い換えると、それは3Dソフトの活用によって住居領域の指導に関する前述の3つの大きな難題を、プラス志向に好転させ得る、という確信が持てたことである。
学習指導要領には「実践的体験的な学習活動」「課題解決学習」「5/10以上を実習・実験に充当」とあり、楽しく印象的な学習は生活への実践力を高めてきた。今日ほとんどの家庭科室には食生活理解のために調理台や調理器具等が、また衣生活理解のためにミシンやアイロン等が設置されている。住居領域の指導においても3Dソフトを利用することができれば、課題を通して生活空間を前向きに捉え、実生活をふまえつつ「生きる力」を育むことができるものと思われる。そして各領域が有機的に関連することで家庭科教育の質を高めることができると考える。