抄録
【研究目的】
近年、問題解決力がPISA型の学力論において改めて注目されるようになった。また、新学習指導要領でも、問題解決的な学習に関連する文言が明記された。生活における問題を発見し、児童・生徒が主体的に解決できる力を身につけることが、家庭科における重要な目標であることは言うまでもない。
では、現状の家庭科ではどのような問題解決的な学習が展開されているのであろうか。そうした授業では、現場教師はどのような学びの成果を実感し、あるいは困難を抱えているのであろうか。言い換えれば、家庭科で問題解決的な学習を展開する上で、何が障害になっており、どのようなエンパワーメントが求められているのであろうか。
本報告では、家庭科における問題解決的な学習の現状と課題について、現場教師に対するアンケート調査によって明らかにする。家庭科で問題解決的な学習を実践するにあたって教師に求められるものは何なのか把握することで、大学における家庭科教員養成カリキュラム、あるいは現場教師に対するエンパワーメントプログラムを提案するための基礎資料を得ることを目的とする。
【研究方法】
教育現場の実態を把握するため、アンケート調査を実施した。調査概要は、以下のとおりである。
・調査時期:2010年8月上旬~中旬
・調査方法:一斉配布・一斉回収・自記式アンケート
・調査対象:大阪市・福井市・金沢市で教員免許更新講習を受講した教員59名(回収票57名)※非常勤講師2名を含む。
・調査項目:問題解決的な学習の実践経験の有無、学習の効果、実践上の困難等
なお、問題解決的な学習の実践については、回答者が該当すると判断したものをすべて挙げてもらった。
【結果】
1.回答者の属性
回答者の現在の勤務校は、小学校24名、中学校11名、高校16名、中高2名、特別支援学校4名であった。性別は全員女性であった。
2.問題解決的な学習の実践経験
家庭科において問題解決的な学習を実践した経験を持つ教員は3分の1に相当する19名であった。実践経験率を学校段階別にみると、小学校3名、中学校5名、高校10名、中高1名で、特別支援学校は「対象外」と回答していた(一部重複)。小学校では、「家庭科以外(生活・総合・理科・算数等)で実践経験あり」との回答(10名)もみられた。
3.問題解決的な学習の効果
問題解決的な学習の実践経験者に対して、どのような学習効果が実感できたか自由記述で尋ねたところ、大多数が何らかの効果について記述した。特徴的な記述として、学習者側では「自主的・主体的・意欲的」に「考える・工夫する・アイデアを出す・解決する」「家庭でも意識して生活・保護者と一緒に実践・生活にいかす」、授業者側では「生徒理解」「生活実態の把握」などがみられた。
4.問題解決的な学習を実践する上での困難
問題解決的な学習の実践経験者に対して、複数回答で尋ねたところ、主体的な取組み(13名)、「考えさせる」こと(13名)、共同的な学びを組織すること(12名)、評価の仕方(12名)、学習時間が不十分(11名)、動機付け・目的意識のもたせ方(10名)を困難と感じていた教員が過半数を占めた。
5.問題解決的な学習を実践する上で必要なこと
全員に複数回答で尋ねたところ、教材開発(37名)と授業時間数の確保(34名)を実践上「必要」と認識している教員がおよそ6割にのぼった。また、授業協力者の確保(21名)、1クラスの児童・生徒数の削減(17名)に対するニーズも3分の1程度であった。