日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: 3-3
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口頭発表
高等学校定時制課程における生徒の家庭科観
-全日制課程との比較からー
*土屋 善和堀内 かおる
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抄録
1.研究目的
 高等学校定時制課程(以下定時制)は、戦後の教育改革により、勤労青年に中等教育への機会の門戸を開くため設けられた。当時、15歳前後の青年は重要な労働力であったため、働きながら教育を受けることができる定時制への進学は増加していった。だが、全日制課程(以下全日制)への進学が普遍化していくと、勤労青年の数は減少していき、それに伴って定時制へ通う生徒の数も減少した。定時制は、勤労青年が通う学習の場としてではなく、全日制を何らかの理由でドロップアウトした生徒の再出発の場所としてとらえられるようになった。1990年以降、定時制に通う生徒の実態を踏まえた教育改革がなされ、現在では、「1つの選択肢として定時制を考える」という方向に変わってきている。
 上記の「定時制課程」という特別な学校文化において、家庭科に関する生徒の学習意欲や授業への取り組みには独自の課題があると考えられる。しかし、定時制で教育を受けている生徒が、家庭科学習をどのようにとらえているのか、また、それを全日制との比較から述べられている先行研究はみられなかった。
 そこで本研究では、定時制における生徒の家庭科観の調査を通して、全日制との比較をもとに、定時制での家庭科教育の現状と課題を提起することを目的とする。
2.研究方法
 神奈川県下の全日制・定時制を併設の普通科高等学校7校と普通科単位制でフレキシブルスクールと呼ばれている高等学校2校に通う生徒を対象として、「高校生活と家庭科学習」について問うアンケート調査を実施し、分析・考察した。対象者は定時制295名(男子158名、女子135名、無回答2名)、全日制640名(男子329名、女子311名)、有効回収率は定時制48%、全日制88.9%である。
3.結果および考察
(1)学校選択で重要視していたこととして、全日制生徒では「自分の学力に見合っている」「自分の能力を伸ばすことができる」「知識・技術を身につけることができる」が上位に挙がっていた。定時制の中でもフレキシブルスクールに通う生徒は、全日制に通う生徒と同様の傾向を示した。また定時制は、高校生活に関して、「先生と生徒のふれ合いがある」ことが全日制と比較して有意に高率であった。
(2)他教科(国語・数学・理科)と家庭科の授業で身につく力としては、課程を問わず、他教科に比べて家庭科の授業で、「知識や技術」「知識や技術を活用する力」が身につくと考えられていた。一方全日制では、「問題発見力・解決力」や「判断力」、「表現力」など数値で測ることができない力については、上記の4教科を比べると、家庭科で身につくと考える割合が最も低率であった。しかし定時制では、突出した傾向はみられなかった。
(3)家庭科の授業に対する意識として、家庭科の授業が「自分の意見や考えを表現できる」「他の人と意見を交換する場がある」と考える割合は、定時制が全日制より有意に高率であった。  
(4)家庭科の目標として、「生活に関する知識・技術を習得するため」と「快適な生活を営むことができるようにするため」と考える生徒が全日制・定時制共に高率であり、この傾向は、特に全日制の生徒に顕著であった。一方「自分の意見や考えを表現できるようにするため」、「生活の課題や問題を発見できるようにするため」「根拠を持ち判断できるようにするため」を目標と考えた生徒の割合は、定時制に通う生徒の方が高率であった。
(5)栄養素の知識を除くすべての項目で、生徒が「身につけたい」と思う割合は、全日制が定時制よりも有意に高率であった。他方、定時制は、「できる・知っている」と思う割合において、全日制よりも有意に高率を示す項目が多かった。
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© 2010 日本家庭科教育学会
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