日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: 3-5
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口頭発表
文部省 『教科書研究要録』にみる教科書研究の検討
*青木 香保里
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詳細
抄録
目的
 『教科書研究要録』(第1集、1957年)における教科書研究ならびに戦後初期に示された教科書検定基準が適用された「職業・家庭科」教科書がどのように分析されたのかを検討する。

方法
 文献研究による。

結果
_丸1_『教科書研究要録』第1集の概要
 第1集(1957年、全227頁)は、昭和32(1957)年度使用教科書について都道府県教育委員会・五大市教育委員会が行った教科書研究の概要を集録している。同書は、「第1章 研究報告の概観」「第2章 研究報告の一覧」「第3章 研究報告の一例」で構成され、それぞれ「国語科」「社会科」「算数科・数学科」「理科」「音楽科」「図画工作科」「外国語科」「保健体育科」「職業・家庭科」について研究報告している。
 昭和31(1956)年度予算により、教科書制度改革の一方策として、全国600箇所に教科書センターが創設され、教科書の研究活動のための国庫補助が行われる。『教科書研究要録』は、各都道府県および五大市教育委員会1)の全面的な協力を得て、「将来の教科書研究の発展のための契機ともなりうるとの見地」2)から、研究成果として発刊される。

_丸2_『教科書研究要録』第1集にみる「職業・家庭科」の研究報告
 全国の教科書研究センター600箇所のうち、職業・家庭科教科書を研究したセンターは、約1割にあたる64箇所で、岩手・京都・鳥取・島根・佐賀の6府県を除いた都道府県のセンターが教科書研究にあたった。教科書研究にあたっては、地域の職業・家庭科研究会等が会合等をもって研究方針を定め、作業を分担し、結果を持ち寄り、討議を重ね、研究成果をまとめあげていく方法をとる場合が大半であった。
 各教科書センターによる教科書研究の観点は、程度の差はあるものの、検定基準の各項目に準拠して行われていた。

_丸3_ 教科書研究における内容の検討
 研究報告では、「教科書の内容の量的な分析に主力が注がれて、質的な追求は比較的手うすであった。さらに、教科書内容の正確・信頼度に関するものや、現代の進歩に応じているかどうかの研究はきわめて少なかった。」3)と概括する。
 内容の質的な分析として、「基礎的技術がどのように取り上げられているか」「技術の系統がどのように取り上げられているか」「教科書の内容が実践的に編成されているか」「教科書による知識注入のしくみになっているか」「社会的、経済的な知識・理解の取り上げ方についても、はたしてこの教科の内容としてふさわしい取り上げ方がされているか」等が検討されている。また、「地域社会の実態に即して、ふじゅうぶんな内容、不必要な内容を調べているもの」「教科書を通してこの教科のミニマムエッセンシャルズとは何かを探求しているもの」「共働的な訓練の場が考えられているか」の検討もなされている。
 1951年版学習指導要領(試案)のもと生活単元学習を基軸に展開した教科書を分析するにあたり、「素材をきわめて具体的にあげてある」教科書を構成する論理を、いかに「内容」「組織・配列」と関連づけ分析するかという問題に対し、試行錯誤して研究に取り組んでいたことが窺われる。
註・引用 
1)五大市:大阪、京都、名古屋、神戸、横浜
2)文部省『教科書研究要録 第1集』1957年、3頁
3)同上、37頁
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© 2010 日本家庭科教育学会
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