抄録
1.目的
小学校家庭科では、これまで食生活や衣生活領域は様々な工夫をこらした教材開発を行い、多くの授業実践が行われてきている。それに比べ、消費生活領域の教材開発はあまり行われていないのが現状である。そこで、今日私たちの消費生活と環境の問題は切り離せない課題となっていることと、2008年の改訂によって「環境に配慮した生活の工夫」という項目が導入されたことから、新たに教材開発を進めていくことにした。ただ、環境と消費を結びつけるだけでは抽象的になりがちなので、食生活領域と関連させることによって、児童の興味・関心に合わせるとともに、環境に負荷が少ない生活の実践方法について、より身近なところから考え、学習したことを生活に活かすことがより容易になる。そこで、食生活領域の中で環境保全にとって重要な「地産地消」、「フード・マイレージ」を取り上げて新たな教材開発を行い、その授業効果について分析をすることを目的とする。
2.方法
国立大学附属A小学校6学年1クラス26名を対象とし、授業実践及び、授業前後に質問紙法によるアンケート調査を行い、その授業効果について分析する。実施時期は、2011年11月~2012年12月である。
3.結果
(1)教材作成
文献調査を行うと、「フード・マイレージ」を取り扱った実践のほとんどが中学生以上であり、輸送量(トン)を用いて計算していたり、パソコンを使って計算をしているものだった。そのため、今回の研究の対象の小学生が取り組むにはフード・マイレージ量の計算が難しいと考えられるので、オリジナルの計算方法として、「輸送量(キログラム)×輸送距離(キロメートル)」を用いることにした。
(2)アンケート調査
小学生にとって、「地産地消」という言葉は耳にしているものの、どういった意味で使われているのか、どういったメリットがあるのかまでは理解していないことが明らかになった。同様に、フード・マイレージについても小学生にはほとんど知られていないといえる。だが、学習後の調査では、言葉の意味を正しく書くことのできる割合も増え、また環境に良い取り組みをしようとする割合も増えている。このことから、「地産地消」や「フード・マイレージ」は小学生でも学習できる題材であり、環境保全意識を高めることができる教材だと言える。また、授業の感想の分析によって、児童が授業に興味をもって取り組むことができ、環境保全意識を高めることができる教材であることが明らかになった。
(3)授業実践
授業の最後に、今後どのようなことに気をつけて買い物をしたいかを各自記述させ、発表させた。すると、今回の授業の主な内容は環境を考えて商品を選ぶということをフード・マイレージという考え方と実際にその計算を行うことであったが、少し触れたエコバックをもっていく、スーパーへ自転車や歩いていくといった買い物に関わった環境を考えた行動についての記述が多くみられた。これらのことから、小学生の児童にとって、スーパーにおいて商品を選ぶ機会が少ない上に、商品の産地を見比べ自らの意思で商品を決定する機会がほとんどないため、今から自分たちにも簡単に取り組める買い物に関わった環境を考えた行動が感想の中心になってしまったのだと考えられる。