日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第55回大会・2012例会
セッションID: A1-4
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第55回大会:口頭発表
東京都A市小学校における食育活動の実態とその課題
インタビューデータのKJ法による分類から
*野田 聡子大竹 美登利
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抄録
目的
平成17年制定の食育基本法を踏まえ、東京都では平成18年9月に東
京都食育推進計画を、A市では平成20年6月にA市食育推進計画を策
定した。これらの中では特に、学校における食育の充実を提案して
いる。学校での食育推進を図る上で、自校式給食を行うA市の小学
校ではとりわけ各校に配置されている学校栄養士の存在が大きい。
そこで本研究では、A市の小学校において栄養士により行われてい
る食育活動の実態と、その課題を探ることを目的とする。
方法
【調査方法】A市内の公立小学校にて、各校における食育推進のキー
パーソンに対し、校内での食育の取り組み状況や課題に関して半構
造化インタビューを行った。インタビューの内容はICレコーダーで
録音した。その後録音データを全て文字に起こし、KJ法をもとに分
類を行った。
【分類方法】分類にはKJ法を使用した。インタビューデータをラベ
リングし、そのラベルをもとに表札作り、島作りを行い、図解を作
成した。その後、図解を文章にて説明する文章化を行った。
【インタビュー対象者】A市公立小学校全9校に調査協力を依頼し、
了承が得られた8校を本研究の対象とした。インタビューの対象は
8校に所属し、インタビュー参加を承諾した栄養士5名、校長2名、
副校長2名である。
結果 
1.校内では食育推進に関して、積極的な立場と消極的な立場が存
在する 
栄養士の多くは、普段児童の食に関する知識不足を感じる
ことや、これまで行った食育活動の効果を実感することから、<食
育の必要性>を認識している。これがきっかけとなり、1日3食の1
食を給食として学校で食べることの重要性、つまりは1/3食の重要
性や、専門的立場から食に関して少しでも伝えていきたい、食育を
広めていきたいという栄養士としての使命感が<食育推進の積極的
要因>となっていることが分かった。一方<食育推進の消極的要因
>としては、給食は1日3食の1食でしかないという1/3食の限界や、
準備・片づけも含むため限られている給食時間の問題、また多忙な
学校現場という要因が明らかとなった。<食育の必要性>を踏まえ
<食育推進の積極的要因>を多く語る者と、数々の限界から<食育
推進の消極的要因>を多く語る者が存在する校内では、食育活動を
考える栄養士にとって少なからぬ葛藤を生む原因になると考えられ
る。2.校内では食育活動を推進する力と、それを押し留める力が
存在する 
校内には食育を≪推進する力≫とそれを≪押し留める力
≫、という相反する二つの力の存在が見出され、食育を進める上で
栄養士の大きな葛藤になると考えられる。≪押し留める力≫として
は、食育活動を教員や管理職に持ちかける上での<栄養士自身のた
めらい>が大きくある。ためらいを生み出す要因として、限られた
授業時間数や教員の多忙さなどの直接的に<食育推進を阻む外的要
因>と、食育活動は本来栄養士の仕事ではない、学校では食育まで
扱いきれないといった<管理職の消極性>が間接的に関与すると考
えられる。一方で≪推進する力≫も存在する。具体的には教員免許
を持った栄養士の存在を核として、教員や児童との関係作りなどの
<栄養士の努力によるもの>と、他校栄養士や教員などの<栄養士
を支えるもの>、そして教員や調理員の受け入れ・協力といった<
食育の浸透・受け入れる雰囲気>の3要素が見出された。3.4つの
課題に取り組むことで、今後のよりよい食育活動が期待できる 

在各校で行われている様々な食育活動は、単発で終わっているとい
う課題がある。したがって今後は取り組を評価し、系統立てて継続
した取り組みを行うこと、そして食育の司令塔を中心とした校内体
制の確立を図ること、が必要であると考えられる。
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© 2012 日本家庭科教育学会
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