抄録
【研究目的】
PISA型の学力論において、改めて問題解決能力が注目されるようになり、改訂学習指導要領にも“問題解決的な学習”に関連した表現が記載された。家庭科では、児童・生徒が生活における問題を発見し、主体的に解決できる力を身につけることを重視しており、これまで以上に“問題解決的な学習”が求められている。
我々は、問題解決的な学習がどのように展開されているのか、家庭科教員に対する質問紙調査によって明らかにした(2010年度例会)。児童・生徒が問題解決的な学習に対して「自主的・主体的・意欲的・熱心」に取組み、「思考力・創造力・実践力の獲得」につながるといった効果とともに、教材開発や研修、関連するコンテンツの提案などの教員に対するエンパワーメントの必要性や、授業時間数の確保など、学校における周辺環境の整備が課題として示唆された。
しかし、質問紙調査の制約及び限界から、具体的な授業の詳細までは把握できていない。そのため、どのような“問題解決的な学習”によって、児童・生徒がどう学び、教員自身がそれをどう評価しているのか、授業の実際から把握する必要があると考えた。
そこで本報告では、“問題解決的な学習”の実践者である家庭科教員を対象にしたインタヴュー調査によって、効果と課題を明らかにすることを目的とする。
【研究方法】
・ 調査方法:半構造化インタヴュー調査 60分~80分/人
※事前に調査項目を記したシートを渡し、実践記録など問題解決的な学習に関係する資料の準備を依頼
・ 調査時期:2011年1月~3月
・ 調査対象:福井県・富山県・大阪府の家庭科教員(小2中1高2, 計5人)
・ 調査項目:問題解決的な学習の具体的な実践の様子、児童・生徒の学習の効果、実践するにあたっての課題 など
【結果】
学習対象とする児童・生徒の発達段階や学校種等により回答内容に相違や多様性はあるものの、問題解決的な学習への理解や取り組み方、課題への認識等において以下のような共通の特徴がみられた。
1.問題解決的な学習について
問題解決的な学習は、「既成概念を問い直すことで問題状況を自覚させる」「問題の存在に気づかせるところがポイント」であり、「葛藤しながら多様な視点を身につけていく」と捉えていた。また、「生徒とともに授業をつくりながら進めていく」といった発言もあった。
2.実践した問題解決的な学習のポイント
これまでに実践した問題解決的な学習のポイントについては、「探究する場・体験的に試す機会を保証する」「生活感覚を軸におく」「解決のための選択肢は多様に提示し、意思決定するまでのプロセスの重要性を伝える」「子どものリアルな生活場面を具体的に題材として取り上げる」「問いを重ねながら児童・生徒を追い込み、どうすればよいか考えさせる」などの発言があった。
3.問題解決的な学習の効果
問題解決的な学習の効果については、「他者と関わり学び合うことで学習が深化する」「失敗経験や試し活動によって探究の目的が明確化し、意欲的・主体的な学びにつながる」「探究する・思考することで学ぶ楽しさを知った子どものエネルギーは無限」「抑えたいポイントや視点、問題意識が継続する」「グループ学習によって多様な価値を認め合える」などの発言があり、多くの可能性を見出していた。
4.問題解決的な学習の課題
問題解決的な学習の課題については、「時間の確保」「探究活動ではインターネットリテラシーが不可欠」「生徒の関心の方向性をキャッチする」などが挙げられた他、教員の課題として「結果の振り返りまで保証する」「単発ではなく継続性のある学習を組み立てる」「共同で学ぶことの意義を伝える」などが挙げられた。