日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第55回大会・2012例会
セッションID: P04
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第55回大会:ポスター発表
家庭科における複数領域の内容を含む教材としてのノクシカタの検討
*都甲 由紀子財津 庸子
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抄録
1.はじめに 学習指導要領の改訂もあったが、依然として家庭科の授業時間数は各学校段階において増加していない。限られた時間数の中で、複数の領域にかかわる内容を含む教材による学習を行うことにより、生活を総合的にとらえることも可能になり、時間数も有効に使うことができるのではないかと考え、ノクシカタの教材開発を行いたいと考えた。ノクシカタとは、バングラデシュの手芸である。「ノクシ」は刺繍、「カタ」は布を表す言葉である。現在でもバングラデシュでは、家庭において行われている伝統的な女性の手仕事である。近年はフェアトレード商品としても位置付けられてきている。
2.ノクシカタ教材の家庭科における位置づけ 手指の巧緻性の低下が指摘され、指導要領改訂で中学校において布を使ったものづくり学習が必修に位置づけられている中で、ノクシカタを教材として用いた授業により針仕事の労力を体験的に知り、手指の巧緻性を向上させることにつながりうると考えられ、衣生活領域の内容として被服製作の基本的技能習得を可能にすることができる。消費生活領域の内容としては、フェアトレードを通して南北問題への認識を深め、自身の消費行動を振り返り、さらに消費行動の社会的責任も認識させ得る。家族関係や職業労働、家事労働の学習と関連づけて、女性の自立を考えさせることもできる。以上より、家庭基礎及び家庭総合において、被服分野・消費生活分野・家族分野の総合的教材となり得る可能性があると考える。
3.研究目的及び研究方法 被服(手縫いの実習)・消費(社会的責任・南北問題等)・家族(ジェンダー等)を関連づけて学習する可能性のある題材として、ノクシカタを位置付け、その教材化を具体的に検討する。まず、学習指導要領における被服・消費・家族に関する学習内容よりノクシカタ教材によって学習可能な内容を整理する。さらに、大学における予備実践により教材としての有効性を検証し、中高の家庭科への導入にむけて改善する。
4.ノクシカタ教材の具体的な学習内容 フェアトレードの意義を理解して自身の生活に活かすには、先進国の便利で快適な生活を支えている途上国の現状を理解し、意識さえあればできる国際協力の存在を知ることからはじまる。そのことにより、自身の生活における消費行動の社会的責任を認識した行動につなげる。ノクシカタの製作を通して、体験的に手仕事の楽しさや手間を理解させ、労力の価値と商品としての価値の関係にも意識を向けさせつつ、手指の巧緻性向上にも寄与する。以上の内容を学習するため、大学において1コマの授業実践を行った。事前アンケート記入後、授業を行った。授業内容はフェアトレードを理解するためのDVD視聴(20分)後、補足説明をした。なぜ国際協力が必要かということに関して、バングラデシュの縫製産業の現状を紹介し、ファトレード商品のひとつであるノクシカタの製作体験をするため現物を見せた後、製作方法を説明した。製作を開始し、冬休み中に仕上げて課題プリントとともに提出するよう指示した。
5.結果(アンケート・レポート・作品より) 受講生の平均作業時間は12.8時間であり、売るとしたらいくらで売るかという質問に対する答えの平均値は438円であった。発展途上国でも針仕事の技術と文化が根づいている国と、ほとんど針仕事が消えてしまい製法が分からない布製品をほぼすべて購入して使用する先進国を比較し、経済的な観点だけでない豊かさに気づかせることができた。事前事後レポートより、フェアトレードへの関心を高め、針仕事の労力を体験的に理解させることができ、先進国の衣生活の現状を振り返らせることができた。途上国の女性の労働のあり方より、家庭や社会における女性の労働のあり方を考えるきっかけにもできる可能性がみられた。今後は中高家庭科への導入に向けた改善の方向性をさらに具体的に検討していく。
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© 2012 日本家庭科教育学会
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