2026 年 26 巻 1 号 p. 13-21
角層は,体内の水分が体外へ蒸発することを制御し,外界からのさまざまな刺激が体内に侵入することを防ぐバリア機能と,角層自体に水分を保ち体内の水分を維持する水分保持機能を有する。このバリア機能や水分保持機能は,加齢や外気の乾燥などの影響で低下してしまう。
我々は,保湿機能をこれまで以上に高める成分開発を目指し,角層の保水力を維持する新たなアプローチとして,保湿剤としてクリームなどに広く利用されているワセリンに着目した。一般的にワセリンは極性が低く水に溶けない油性成分のため,皮膚浸透性は極めて低く,専ら皮膚表面を覆い水分の蒸散を防ぐことで保湿効果を発揮する。一方で接触やこすれなどで皮膚表面から取れやすく,効果が持続しないという課題がある。
今回開発したナノ化ワセリンは,粒子を約80nm以下のサイズに微細化した結果,角層への浸透性が大きく向上することが分かった。さらに,浸透後の保水効果や角層を膨潤させる作用があることも確認した。極性の低い炭化水素系の油性分子の皮膚浸透性は,これまで非常に低いと考えられていたが,ナノ化によって水系へ安定に溶解しテクスチャが向上するのみならず,保水効果との両立も可能となった。本研究により,ワセリンの新たな有用性が発見され,スキンケア製剤への応用の幅が広がった。