抄録
【目的】 新学習指導要領が平成23年度から実施されている小学校家庭科では,8つの内容から4つの内容へ改善され,中学校技術・家庭科の内容との系統性や連続性が重視されている。また,平成20年1月17日の中央教育審議会の答申の改善の基本方針では,家庭科に関して,「体験から,知識と技術などを獲得し,基本的な概念などの理解を深め,実際に活用する能力と態度を育成するために,実践的・体験的な学習活動をより一層重視する。」1)ことについて述べられている。この実践的・体験的な活動等は,直接体験や情報の収集,製作や調理などの実習,インタビューや実験等の実感を伴った理解に資する具体的な学習を示している。小学校の家庭科において,調理実習や被服製作にかける時間は長いが,実験を行うことは非常に少ない。家庭科の知識や技能を科学的な根拠に基づき体験的に学習するとともに,家庭生活で実践するためには積極的に実験を行うことが必要である。
著者らは今までに,小学校教員になるために必要な教職共通科目である「初等家庭科教育論」で取り組んだ実験内容について報告した2)。また,学生が設計・実施した模擬授業を検討し,学生による相互評価の分析を行った3)。さらに,実験教材と模擬授業を実施する講義内容を,学生がどのように受けとめているのかについて,最終の授業後に行う学生の授業評価を分析して改善した4)。 本報ではこれまでの分析結果をもとに,授業で取り入れやすい実験教材を考え,授業改善をめざして実験内容の再検討を行った。講義終了後,学生が作成した学習指導案の評価をもとに,授業の到達目標の達成度をみた。
【「初等家庭科教育論」における授業内容の改善】 「初等家庭科教育論」は,毎年150名以上が受講する多人数の講義科目であるが,学生が主体的に授業に取り組めるように,講義の中に家庭科の各分野から選択した6種類の実験を行っている。その後,それらの実験を取り入れた学習指導案の作成と模擬授業を,グループ(各班10名前後)ごとに実施している。授業の概要については授業実践2)にて報告した。 平成14年度の実験内容は,学校現場で実験材料を安価に入手しやすいものを中心として選択したが,実験内容が理解できない学生も多かった。その後,年度ごとに実験内容を見直して,現在では準備と片付けを比較的短時間で行うことができる市販のパックテストやテスターを使用している。
【授業の到達目標から見た学生の達成度】 本授業の到達目標は,「1.小学校家庭科の教科内容を理解する。2.小学校家庭科の学習指導案を作成できる。」の2つの目標である。この目標の一つであり,期末試験として実施した各個人による学習指導案の評価結果(平成23年3月実施)から,A,B評価合わせて75%の学生が,家庭科の学習指導案を作成できたという結果が得られた。
【まとめと今後の課題】 学生による授業評価アンケートの自由記述をまとめた結果,グループごとに作成している学習指導案と模擬授業を実践力として捉え,好意的に受け入れられていることがわかった。その反面,期末試験の学習指導案の作成に疑問を持つ学生や,少人数の授業を希望する学生もいた。非科学的な情報に振り回されることのないように,科学的な判断能力を養うために,今後も実験を活用した授業を継続する。
1) 文部科学省:小学校学習指導要領解説家庭編,東洋館出版社,2008.
2) 篠原他2名,鳴門教育大学授業実践研究第2号,2003,p.133-140.
3) 福井他3名,鳴門教育大学授業実践研究第3号,2004,p.51-55.
4) 福井,鳥井,家庭科教育実践研究誌,第7号,2008,p.17-22.