抄録
目的
持続可能な社会をめざすことは、家庭科教育にとって重要な課題の1つである。しかし、その意識や概念は十分に理解・認識され、共有されているとはいえず、授業での実践は家庭科教員の中で広がりを見せてはいない。「ESDとしての家庭科」とはどのようなものか、先行研究をもとに具体的な教育内容、独自性、役割、課題を早急に明確にしていくことが必要である。そこで、本研究では、家庭科におけるESDの実態把握をするために、各種実態調査の先行事例を検討し、本調査を行うための予備調査の位置づけで行った家庭科教員対象アンケート調査の分析・検討結果を明らかにすることを目的とする。
方法
1.実態調査先行事例の検討
ESDに関連する実態調査の先行事例を研究論文、授業実践報告書、国や地方公共団体における実態調査報告書等から収集し、分析・検討を行った。
2.家庭科教員対象アンケート調査(予備調査)の実施
上記、実態調査先行事例を参考に調査項目を設定し、2012年8月に福島県と山梨県の中学校・高等学校の家庭科教諭97名を対象に実施した。
結果
1.実態調査先行事例の検討
「学校における持続可能な発展のための教育(ESD)に関する研究中間・最終報告書」(国立教育政策研究所2010・2012 )、「持続可能な社会づくりを目指す環境教育に関する研究~実践を通したESDの推進~研究報告書」(埼玉県立総合教育センター2011)、その他、各種授業実践に関わる生徒の実態調査他が収集され、検討を行った。
2.家庭科教員対象アンケート調査(予備調査)の分析・検討
(1) ESDに関連に対する理解と関心
ESDに対する理解については、内容まで理解している教員は5人(5%)と少数であり、「ESD という言葉を聞いたことがある」29%、「知らない」61%であった。ESDに対する理解度は低く、家庭科教員に浸透していない実態が明らかとなった。一方、ESD の概念の説明を読んだ後の回答では、ESD に対して、9割近い教員が関心を持っていた。
(2) ESDに関連する授業の実践状況
ESDに関連する授業を「現在実施している」14%、「将来実施予定」44%、「実施予定無し」26%であり、実践率は高くは無いが、関心の高さと比例して、実施予定が半数みられた。
(3) ESDに関連する授業の実践領域(複数回答可)
「食生活」13%が最も多く、次いで経済・消費領域、衣生活、住生活の順で実践されているが、その他の領域の実践は少数であった。
(4) 家庭科におけるESDに関連する授業内容に対するイメージと具体的授業内容
家庭科におけるESDに関連する授業内容をイメージできるのは約半数の教員であり、具体的授業内容として、エコ活動やリサイクル、衣服のリメイク、グリーンコンシューマー等があげられた。
(5) 家庭科の学習内容に関連するESDのキーワード
各種報告書において、ESDに関連する概念等としてあげられている40種のキーワードのうち、家庭科に関連するものを選択してもらった結果、循環72人(74.2%)、共生58人(59,8%)が多く、次いで、共存共栄、健康維持、調和、将来、責任、意思決定等となり、循環といった環境教育と関連の高いものだけではなく、共生や意思決定といった家庭科と関連が深いキーワードも多数あげられた。
考察と今後の課題
家庭科教員はESDという用語についての理解度は5%と低く、用語そのものは浸透していないものの、用語を理解した後は、実践しているとの回答が14%あり、実際には実践しているが、ESDとして意識化した授業実践が行われていない実態が浮き彫りになった。また、ESDに関する関心度は高く、半数の教員が実施を予定している実態をふまえて、支援サポートの有り様を検討する必要性も認められた。今後は、質問内容の再検討を行い、全国各地の小中高等学校の家庭科教員を対象に本調査を実施する予定である。
注:本研究は、日本家庭科教育学会平成24年度課題研究WG「ESDとしての家庭科教育の可能性と役割」の活動の一環として行っている。