日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第55回大会・2012例会
セッションID: 2-5
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2012年度例会:口頭発表
中学校家庭科における消費者教育の授業実践とその評価
*栗原 恵美子馬場 由子和田 早苗
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抄録


≪研究目的≫消費者被害はなかなか減少せず、中学生にも架空請求等、身近な所で問題は起こっている。また、エネルギーや環境問題、他者との関係性など、持続可能な社会を考えたとき、「消費者」としての生徒の意識を高める必要性を強く感じる。教育手法を変えての授業効果を調べた我々の先行研究(H22 ~H23実施、調査対象:都内国立大学附属中学校、東京都B区立中学校、第1学年合計生徒数227名)では、それぞれの手法で、消費者として必要な知識の定着等の効果が見られた。更によりよい消費者教育(情報を正しく読み取る力、自分で考え判断し行動する力、選ぶ目を持つこと、消費者の権利と責任を自覚すること)を実践する為に、本研究では、①消費者教育に時間数をかけること、②消費者教育を実施するにあたり、様々な手法を組み合わせること、③中学生の消費者教育で、学習内容等の配慮事項を見出すこと、により、消費者教育の効果が更にあがる授業展開を明らかにすること、を目的とする。≪研究方法≫1,   今回は授業時間数を3コマから5コマに増やして授業を行い、時間数を増加したことによる効果を確認する。2,   前回の研究では、ロールプレイング、ゲーム、DVD視聴、グループワーク、消費生活センター相談員からの講義、のそれぞれの手法を別々のクラスに用いたが、今回は同じクラスで、ロールプレイング、ゲーム、DVD視聴、グループワークの手法を全て実施して、その効果を検討する。3,授業の評価を生徒の成果物(ポスター)、調査票、自由記述から分析する。(H23~H24実施、調査対象:都内国立大学附属中学校第1学年・3学年合計生徒数258名)≪研究結果≫1,   授業時間数を3コマから5コマに増やし、 ロールプレイング、ゲーム、DVD視聴、グループワークの手法を全て取り入れて授業実践をしたところ、事前事後調査票によるデータでの明らかに大きな違いは見られなかったが、5コマにふやした授業実践での成果物(ポスター)は、よく考えられたものがあり、学びの深まりと広がりが見とれる作品が多く、違いが明らかになった。2,   今回手法を組み合わせ、全ての手法を用いることで効果が得られ、中でも手法として、ゲームを通しての学習が、楽しく、かつ学びになる、と捉えている生徒が多いことが調査票から明らかになった。3,調査票の自由記述から、中学生(都内国立大学附属中学校)を取り巻く消費者トラブルの現状として、ネット社会での架空請求が多いこと等がわかった。4,調査票により、小学校での学習内容である「小遣い帳をつける」や、中学校で確認した「断り方として『結構です』は曖昧な言葉で、使わない」等、定着率がよくない内容が明らかになった。5,調査票の自由記述や成果物から、消費者教育で習得した学習内容を学校生活等の他の場面で活用できることが明らかになった。例えば、悪質業者に対し「きっぱり断る」の学習の効果や、持続可能な社会の学習の効果が、記述されていた。≪課題≫今回は、ロールプレイング、ゲーム、DVD視聴、グループワークの手法を全て用い教育効果が見られた。今後も引き続き、消費者庁や各地方自治体がネット上で提供するポータルサイト等を利用しつつ、生徒の興味関心を惹き、かつ教員も取り組みやすい教材を用いて授業展開を工夫することを課題としたい。

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