日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第55回大会・2012例会
セッションID: 2-6
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2012年度例会:口頭発表
給与明細書における社会保険料控除の理解
*神山 久美
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抄録
 [ 目的 ] 
 平成20年中央教育審議会答申では、高等学校家庭の改善の具体的事項として、「高校生の発達課題と生涯生活設計、キャリアプランニングなどの学習を通して、次世代を担うことや生涯を見通す視点を明確にするとともに、生涯賃金や働き方、年金などとの関係に関する指導などを加え、生活を総合的にマネジメントする内容を充実する」と示され、新学習指導要領において、生涯の生活設計の内容が重視されている。給与所得者の給与明細書は、高校「家庭総合」の教科書で扱われているものが見られ、社会保険制度などを学べる生活設計に適した教材の1つであると考えられる。大学生においても同様であり、卒業後に給与所得者になる学生が多いことから、学生が興味を持つ教材になると考えられた。
 そこで、大学1年生の授業において、給与明細書を教材として導入した。社会人向けの情報として、給与明細書の見方を示すウェブページなどが、多く存在している。ほとんどの給与所得者は、手取額のみに着目し、給与明細書の内容を理解していないことが多く、特に、社会保険料控除の意味がわかりにくいようであった。この給与明細書における社会保険料控除を理解させるために、学生にどのような課題を与えればよいか、2年間に渡り試行を行った。
 [ 方法 ]
 A女子大学家政学部1年生「家庭経済学」において、社会保険制度について学生に講義で説明した後、授業内課題及びレポート課題を出した。課題内容は、給与明細書を掲載し、後輩の新入社員から給与明細書の社会保険料控除について質問をされ、先輩の会社員として新入社員が理解できるように説明をするというパフォーマンス課題とした。2011年度の結果を踏まえて、2012年度は課題を一部改良し、学生213人の結果を分析した。
[ 結果・考察 ]
 2011年度のレポート課題では、1.設問に充分に回答できるように文献等で調べ記述する、2.後輩の新入社員がわかるように説明を記述するという順番で課題を出したが、多くの学生がweb情報などを写して新入社員への説明とし、新入社員にわかるように記述していない学生が多かった。そこで、2012年度のレポート課題では、2に、「説明は会話調で、わかりやすいように工夫して書くこと」、「寸劇の台本のように記述してもよい」と条件を加えた。学生にはルーブリック(評価指標)を事前に提示し、課題終了後には、それに対する自己評価を行わせた。
 レポート課題では、学生全員が、社会保険控除に関わる事前の文献調査の記述と、会話調の新入社員への説明の記述を分けて記述した。学生は、専門用語を言い換えたり、日常使う簡単なことばを使ったり、例を挙げて説明をするなどの記述をしていた。また、特にわかりにくいところは、新入社員が質問を返すという設定にして、それに対して説明をつけ加えるなどの記述をしていた。このように学生は、授業内容や文献等を自分で調べて獲得した知識を、新入社員に給与明細書の社会保険料控除をわかりやすく会話調で説明するという課題を通して、知識を構成、活用することになったと考えられた。学生は、このレポートの感想で、「かなり考えた」、「時間がかかった」、「工夫して表現した」、「課題をすることで理解が深まった」などと知識の構成・活用に関わる感想を記述し、また、「給与明細書の理解は社会人にとって重要である」という課題の内容に関わる感想の記述をしていた。
 ルーブリックを3つ設定し、そのルーブリックに対して、課題終了後に自己評価を4段階(1:よくできた、2:できた、3:不十分、4:できない)で行わせた。授業内課題として行った同課題については、平均2.51であったが、レポート課題では、平均1.74と自己評価が高くなった。
 今回の給与明細書における社会保険料控除のように、生活設計に必要であるが理解しにくい課題については、学習者の知識の構成・活用ができるよう、課題を工夫して出すことが必要であると考えられた。
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© 2012 日本家庭科教育学会
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