日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第56回大会・2013例会
セッションID: A1-1
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56回大会:口頭発表
家庭科学習による学びを可視化する単元開発と授業の分析
-小学校5年生「できるようになったよすごろく」作りからの考察
*岡部 雅子堀内 かおる
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抄録
〈研究の背景と目的〉家庭科初年度である小学校5年生の1年間の授業は,教師も子どもも初めて行う調理実習や裁縫実習などに目が向きがちで,学びの成果を振り返り互いに共有することがないまま個々の子どもの活動に収束してしまいがちである。家庭科学習のスタートで行ったガイダンスを受けて、5年次の終わりには1年間の学びを振り返り,互いの成長を認め合い,6年次へとつながる課題を持てるようになるための時間を位置づけたいと考えた。そこで,この1年間の学習で自分ができるようになったことをすごろくに作り,発表しあう活動を取り入れることを試みた。
学習のまとめを作品化する先行研究としては「家庭科推奨CM制作による学びの終結からガイダンスをつなぐ試み」(堀内,種村2012)があり,すごろくの教材化では「生活設計教育における『人生すごろく』作りの意義」(齋藤,岡村,上野,牧野1999)「教材『食育すごろくゲーム』活用の一考察」(石澤,名嘉,得丸2012)などがある。発表者は小学校低学年生活科の学習ですごろく作りの実践をした経験から,学びの足跡をすごろくに作品化することに意義を見出していた。すごろくを作る活動を通して家庭科学習による学びの過程と成果や課題を可視化させ,それを発表し合うことによって互いの成長と家庭科を学ぶ意義を友だちと共有する単元を開発することを本研究の目的とする。
〈方法〉授業実践は国立大学附属小学校5年A組(児童数31名)において平成25年2月に行った。題材名は「できるようになったことを発表しよう―できるようになったよすごろくを作ろう―」である。授業数は全10時間,単元の流れは次のようである。
・学級で1年間の学習内容を振り返る。(1時間)
・自分ができるようになったことを学級で共有する。(1時間)
・4人グループですごろくを作る。(6時間)
・すごろくを発表しあい,1年間の成長を共に振り返り,来年度に向けての課題を持つ。すごろくで遊ぶ。(2時間)
〈結果と考察〉導入で5年生の1年間の学習を通してできるようになったこと,分かったこと,失敗した経験などを話し合った後,クラスですごろくのテーマを決めた。内容が多岐にわたった個人の振り返りを生かし,すごろくのテーマは「山あり谷あり針さしづくりすごろく」「ミシンを使えるようになろう 袋作りへの道すごろく」「調理できるかな?すごろく」「部屋のクリーンぼうけんすごろく」「家族のためにがんばろうすごろく」「1年のまとめ~金メダルへの道~すごろく」「まとめテストすごろく」「りっぱな小学生すごろく」の8種類に決まり,1年間の学習内容が網羅された。
すごろくのチェックポイントを作るときには具体的に学習を想起する様子が見られ,それらをすごろくに投影し作り上げていく過程においては,友だち同士の意見交換や議論が盛んに行われていた。また,アイディアが目に見える形で表れているため,他グループとの交流も自然な形で行われており,互いに刺激を受けながら子どもたちは意欲的に活動している様子が見られた。できあがったすごろくのチェックポイントには,友だちや自分の失敗談,成功例,獲得した知識などが可視化され,子どもたちの学びの履歴が時系列にあるいは段階を経て示された。失敗しても戻ればまた進めるというすごろくの特徴から,失敗もネガティブな捉え方をされることなく,むしろ楽しみながらすごろくに盛り込んでいた。
これらのことからすごろくは,学びの過程や成長を可視化し子どもたち同士で共有することのできる教材であるといえる。友だちと協力して楽しみながら学習を振り返り,家庭科という教科で身につけた力を総括し,家庭科で学ぶ意味に気づいた。また,完成したすごろくは,教師にとってこの1年間の授業評価とも読み取れた。(なお、本研究は,小玉亮子お茶の水女子大学教授と堀内かおる横浜国立大学教授との共同研究の成果の一部である。)
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© 2013 日本家庭科教育学会
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