抄録
【目的】当院は1135床を有する倉敷地域における急性期基幹病院である.リハビリテーション治療(以下 リハ治療)の介入形態として2012年3月末までは週5日制であったが,リハ治療の即時性と継続性を重視することによりリハ治療の効果向上を目的とし,2012年4月より365日稼動体制(以下 365日制)が導入されることとなった.また他の臨床研究・報告において,急性期病院における脳卒中科での365日制の取り組みに関する報告は散見するが,整形外科での取り組みについての報告は見つけることができなかった.そこで本研究では365日制による治療効果を検討するため,365日制後における土・日曜祝祭日の介入の有無が大腿骨頸部骨折患者の臨床成績に与えた影響について比較検討を行った.【方法】 2012年4月~10月に当院整形外科病棟に入院した大腿骨頸部骨折患者74例を対象とした.365日制導入後の土・日曜祝祭日に治療を実施した56例を介入群,土・日曜祝祭日に治療を実施しなかった18例を未介入群とし2群に分類した.土・日曜祝祭日に介入を実施する対象基準として,当院で策定した対象者要項では中等度から重度の障害により離床が遅延している患者や生命予後に影響を及ぼす可能性がある患者を介入優先度の高い者とし、その対象者要項に準じ選択的に治療実施した者を介入群とした.なお保存療法や術後荷重制限を要した症例,転科した症例,自宅退院した症例は除外した.検討項目は,年齢,受傷前歩行能力,入院から手術施行までに要した日数(以下 手術待機期間),入院から理学療法(以下PT)開始に要した日数,在院日数,総PT介入期間,術後PT介入期間,開始時moter-FIM(以下m-FIM),終了時m-FIM,m-FIM改善効率((終了時m-FIM-開始時m-FIM)/術後PT介入期間),術後坐位開始に要した日数,術後起立開始に要した日数,術後合併症発症率の12項目について検討した.なお受傷前歩行能力は歩行不能群,屋内伝い歩き・歩行器歩行群,屋内T-cane・独歩群,屋外歩行器歩行群,屋外T-cane歩行の5群に分類し,それぞれ0~4点で点数化した.統計学的解析はMann-Whitney検定とχ2独立性の検定を用い,有意水準は5%とした.【説明と同意】当院個人情報保護方針に準じ実施し、集積データは個人が特定できないようにした.また本研究は当院臨床研究審査委員会の承認を得ている.【結果】年齢,受傷前歩行能力,入院からPT開始に要した日数,術後PT介入期間,開始時m-FIM,終了時m-FIM,m-FIM改善効率,術後坐位開始に要した日数,術後起立開始に要した日数,術後合併症発症率の各項目において,各群間における有意差は認めなかった.有意差を認めた項目について以下に中央値(四分位範囲)で表記する.在院日数は,介入群24(17)日,未介入群19(11)日であり,介入群が未介入群に比べて有意に日数が長かった(P値:0.01).総PT介入期間は,介入群19(18)日,未介入群14(9)日であり,介入群が未介入群に比べて有意に日数が長かった(P値:0.01).手術待機期間は,介入群6(4)日,未介入群4(4)日であり,介入群が未介入群に比べて有意に日数が長かった(P値:0.01). 【考察】 介入群と未介入群を比較すると,在院日数・総PT介入期間が介入群で有意に長かった.これは介入群において手術待機期間が有意に長いことと,両群間において入院からPT開始に要する期間が同程度であったことから,介入群で上記2項目が延長していたものと考える.一方,介入群において手術待機期間が延長しているものの,術前からのPT介入と術後の365日制による治療継続により未介入群と同程度の坐位開始,起立開始がなされており,障害の程度に関らず早期離床が実践出来ている.また,当地域で使用している地域連携パスにおける当院から連携病院への転院条件として,術後合併症がなく状態が安定していることと定めている.介入群の対象者を中等度から重度の障害により離床が遅延している患者や生命予後に影響を及ぼす可能性がある患者としたが、術後在院日数・m-FIM改善効率・術後合併症発症率の各項目において有意差はなく,365日制による術前・術後のリハ治療の継続性により重篤な術後合併症を引き起こさず,入院期間の延長もなく連携病院への転院につなげることができたと考える.【理学療法学研究としての意義】 本研究から,365日制によるリハ治療により障害の重症度に関らず早期離床が実践出来ていることがわかった。しかし本研究では対象症例の層別化が十分ではなく,また介入方法の検討も出来ていないため,十分な効果を示したとは言いがたい.故に,今後はより層別化した対象症例による研究にて,重症度が高い患者に対する術前・術後介入方法の検討や365日制による治療効果の高い対象を先鋭化することで,より効果的・効率的なリハ治療を選定するために本研究を役立ていく.