日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第56回大会・2013例会
セッションID: A2-2
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56回大会:口頭発表
東京都A市中学校における食育活動の実態と課題
インタビューデータのKJ法による分類から
*野田 聡子大竹 美登利
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抄録
目的
平成17年制定の食育基本法を踏まえ、東京都では平成18年9月に
東京都食育推進計画を、A市では平成20年6月にA市食育推進計画
を策定した。これらの中では特に、学校における食育の充実を提案
している。中学校での食育推進を図る上では、食領域が教科の学習
内容に含まれる家庭科の教員と、自校式給食の運営を担う学校栄養
士の存在が大きい。そこで本研究では、A市の中学校において、家庭
科教員や栄養士を中心に行われている食育活動の実態と、その課題
を探ることを目的とする。
方法
【調査方法】東京都A市内の公立中学校にて、各校の家庭科教員や
栄養士に対し、校内での食育取り組み状況や課題に関する半構造化
インタビューを行った。インタビュー内容はICレコーダーで録音し
た。その後録音データを全て文字に起こし、KJ法をもとに分類した。
【分類方法】分類にはKJ法を使用した。インタビューデータをラベ
リングし、そのラベルをもとに表札作り、島作りを行い、図解を作
成した。その後、図解を文章にて説明する文章化を行った。
【インタビュー対象者】A市立中学校全5校に調査協力を依頼し、
了承が得られた4校を本研究の対象とした。インタビュー対象者の
内訳は、4校に所属する家庭科教諭4名、栄養士2名の計6名である。
結果 
(1)中学校では、教科中心の学校文化が栄養士の持つ食育への期待を
跳ね返す構造がある。
中学校で働く栄養士は、小学校勤務時と同様
に中学校でも食の専門性を生かし、機会があれば授業に参加して食
育を行いたいと、<食育への期待>を抱いている。しかし、義務教
育の中でも教科担任制を背景とする中学校では、学校全体で何かに
取り組むよりも、各教科がそれぞれの役割を担うといった≪教科中
心の学校文化≫があり、小学校とは異なっている。教科中心の学校
文化の中で、家庭科は食育と関連の深い教科であり、ゆえに家庭科
の果たす役割は大きいと思われる。家庭科の教員も、食に関する学
びが教科の主な学習領域の1つであることから、校内における食育
の中心は家庭科教員の自分自身であると認識している。しかし家庭
科では以前から食の学習を行っており、それに「食育」という冠が
付いたにすぎないこと、限られた授業時数の中でこれまで以上に食
ばかりに時間を割くのは難しいと考え、学校全体で新たに食育に取
り組む必要性を感じていない。したがって、食育推進の新たな展開
を目指す栄養士とは必ずしも食育に取り組む姿勢が一致せず、栄養
士から見ると、家庭科の教員は食育を好意的には捉えていないと受
け止めていた。また栄養士は各教科の年間指導計画から、家庭科の
他にも理科や社会、保健などが食育に関連することを把握している
が、これらの専門教科で食育を行うには<教科に結びつけることの
難しさ>があると認識している。以上のことから、栄養士の抱く<
食育への期待>は、中学校では≪教科中心の学校文化≫の中で専門
性ある教員や<教科中心>の厚い壁に跳ね返される実態が見出され
た。(2)栄養士の独自性を生かすことで、教科を越えた広い学びの展
開が期待できる。
A市の教員は全員東京都採用であるが、栄養士の多
くはA市が独自に雇い各校に配置している。ゆえに教員とは異なり、
栄養士の多くはA市に密着した存在である。<‘地域’の視点>を
強く持つ栄養士は、給食メニューの工夫や地域人材を活用した食育
の取り組みなど、特徴的な実践を行っていた。また、学年や教科の
枠を超えて生徒を把握している点は栄養士の特徴の一つであり、各
教科の指導を踏まえ、教科横断的な食に関する掲示物などの<学習
環境作り>を学校図書館司書などと共に行った事例もある。このよ
うに中学校でも地域に密着し、学校を広く見つめることのできる栄
養士の専門性やネットワークを生かすことで、校内でより広がりや
深まりのある食育活動の展開が期待できるといえよう。
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© 2013 日本家庭科教育学会
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