抄録
【目的】中学校技術・家庭科の技術分野において、新学習指導要領より生物育成が必修となった。生物育成の中には、野菜の栽培も含まれる。また、家庭分野の調理実習においては、野菜を使った料理を取り上げることもできる。したがって自分たちで食材を栽培し、調理して食べるという連携の授業ができると考えた。しかし、連携の授業を行うにあたっては課題も多いことが考えられる。
そこで本研究では、技術科および家庭科担当教員が栽培や調理実習を行うにあたり考慮していることや、連携に関してどのような意識を持っているのかを明らかにし、栽培と調理実習を連携した授業を効果的に行うための方法を考えることを目的とする。
【方法】2012年9月~10月に、京都府下の全中学校(国立、公立、私立)計199校の技術科および家庭科担当教員を対象に調査を行った。調査票は技術科1部家庭科1部の計2部を送付した。有効回答数及び有効回収率はそれぞれ技術科60部(30.1%)、家庭科56部(28.1%)であった。調査内容は、1.教員および勤務校、2.技術分野または家庭分野の担当学級数及び授業時数、3.「C 生物育成に関する技術」または「B 食生活と自立」の内容、4.技術分野(栽培)と家庭分野(調理)の連携、5.今後生物育成または調理実習の授業を行うにあたっての希望である。
【結果】
(1)栽培および調理実習の内容
実習の題材を決める際の考慮点は、技術科の栽培では「育成が容易」「場所の準備ができる」「生徒が取り組みやすい」の順に多く、家庭科の調理実習では、「生徒が取り組みやすい」「短時間でできる」「家でも作れそう」の順に多かった。「学習内容が多い」、「学年の学習度に合っている」は、技術科はどちらも7名であるが、家庭科はそれぞれ22名と15名であり差があった。また、「生物育成技術があがる」「調理技術があがる」の技術向上に関する項目は、技術科は4名に対し家庭科は21名であり差がみられた。技術科の栽培は経験に、家庭科の調理実習は技術の習得に重きを置いているようである。
実習の問題・課題点は、技術科は「評価の方法」「場所がない」「天候」「管理ができない」の順に多く家庭科は「準備・後片付けの時間不足」「調理の時間不足」「授業時間数」の順に多かった。栽培または調理実習というそれぞれの教科の特徴を踏まえた課題がみられた。
(2)栽培と調理実習の連携
栽培と調理実習の連携授業は技術科18名、家庭科13名が実施しており、内容は栽培したさつまいもで大学いも・スイートポテト作りや、水菜で餃子・お焼きを作る実習等があった。
自分で栽培したものを自分で調理して食べるという授業で、生徒自身が習得できると思うことについて尋ねたところ「生産から消費までの一連の流れ」「栽培の達成感」は技術科の方が多く、「食べ物に対する感謝の気持ち」「食材や料理を作ってくれている人に対する感謝の気持ち」は家庭科の方が多かった。これらは、技術・家庭科の視点の違いがみられた。
栽培と調理実習の連携を行う利点は、どちらも「技術と家庭科の内容を関連付けることができる」「生徒が意欲的に取り組むことができる」の順に多かった。連携の利点が多くあげられる一方で、問題・課題点としては、どちらも「収穫時期・量が調理実習と合わない」が特に多く、次いで「授業時数の分担が難しい」「教員同士の話し合いの時間がとれない」が多かった。「収穫時期・量」を解決することで、連携がしやすくなるとも考えられる。
このように栽培と調理実習の連携授業で生徒が様々なことを習得できると思っている教員が多いにもかかわらず、課題が多く実践に至っていない学校が多いことが分かった。今後はこのような課題を解消しつつ、それぞれの教科で学ばせたい内容を含めた、栽培と調理実習を連携した教材の提案等を行いたい。