抄録
問題の所在と研究目的【BR】若者が社会から乖離していることは,様々な現代社会問題の要因となっている。社会参画の学習経験が,将来における地域への主体的参加につながり、社会と有機的に結びついて家庭生活を創造する力となると考える。【BR】先行研究では,高校家庭科教育で社会参画意識を育むことを目的とし,「高校生の社会参画意識調査」の質問紙調査(量的研究)を実施し,高 校生の社会参画意識の構造を明らかにした。その結果を元に高校生の社会参画意識を高めるための授業改善を行い、授業前と後の社会参画意識を問う「社会参画 意識変容」の質問紙調査(質的、量的研究)を実施し、この授業が高校生の社会参画意識育成に関して,教育的効果が高いことを検証した。これらの研究成果か ら,社会参画教育を視野に入れた家庭科教育が発展するためには,家庭科教員の意識変容のための教員教育の構築が重要であることが示唆された。高校家庭科教 育においては,社会参画の視点からの授業実践例は,まだ僅かであり,社会参画教育のための教員教育の研究は,さらに数少ない。【BR】以上のことから,本研究は,特に,教員教育に焦点をあてることとする。高校家庭科教員の社会参画教育に対する意識構造を明らかにし,教員がどのように家庭科の授業内で社会参画教育に取り組んでいけばいいのかという課題に対しての実践的で有益な知見を得たいと考えている。【BR】研究方法【BR】千葉県の公立高校の家庭科教員15名 を対象に「社会参画教育に対する意識調査」インタビュー調査と「社会参画授業に関するアンケート」質問紙調査を行った。調査内容は,インタビューでは、 「高校生の社会参画のイメージ」という問いをたて,関連要因として「専門科目」「教員経験(専門学科かどうかなどの勤務校の特徴)」「自身の社会参画の経 験」「自身の社会参画意識を高める大学での授業やこれまでの研修歴」等について詳しく聞き取った。インタビューの録音記録から,スクリプトを作成し,質的分析データとした。質問紙では、「社会参画教育に対する意識」,「自身の社会参画教育の視点からの授業評価」という問いを立てた。また、指導案を社会参画の視点として、分析を行った。調査時期は,2011年7月から9月である。【BR】研究結果【BR】質的研究として,高校家庭科教員のインタビュー、質問紙、指導案など多角度から,それぞれの教員の社会参画教育への意識を考察した。【BR】分析の結果,以下のように要約できる。【BR】(1)自分が受けた大学時代の教育で,社会を意識した授業を受けたことが,実現要因になっている。この頃に,家庭科の教員としての価値観が形成されるのではないかと考えられる。【BR】(2)社会参画教育の重要性は,認識しているものの様々な障壁のため,実現していない。家庭科教員にとって,社会参画教育は負担感が大きい。現在それぞれの教員が行っている授業プログラムの社会参画を視点とした再構築を支援することが重要である。【BR】(3)家政科では,家庭クラブで社会参画の機会は多いものの,授業では,資格取得の内容に追われ,社会参画教育を実現していない。【BR】(4)社会参画教育に対する意識は,教員自身の社会参画経験の有無に影響されていない。これは,家庭科で社会参画意識を育む必要があるのか否かという意識「家庭科で教えるべきもの」という教員の固定化された意識が問題であり,研修の機会が必要である。【BR】