日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第56回大会・2013例会
セッションID: A4-1
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56回大会:口頭発表
高校生の被服製作に関する基礎技能の実態
*山野 美咲岡田 真衣秋武 由子
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抄録

【目的】
 近年、わが国では物が豊かになり、何でも簡単に手に入る時代になった。衣生活においても、流行遅れなどの理由から着用しなくなったり、ボタンが取れた、裾がほつれたなど少し補修すれば着用できるものでもすぐに廃棄したりし、新しいものを購入するという傾向がみられ、一つの物を大切に扱い、修繕しながら長く着用するという意識が失われつつある。この原因の一つとして、被服製作に関する基礎的な技能が低下したことが考えられる。そこで本研究では、高校生に対して、小・中学校家庭科で学習する基礎的な被服製作技能の実態を明らかにするため、アンケート調査及び実技調査を行った。
【方法】
 高校1年生80名(男子48名、女子32名)を対象に、小学校で学習する玉結び、玉どめ、なみ縫い、ボタンつけ、中学校で学習する布目、まつり縫いの6項目について、知っているか否か、できるか否か、誰に教えてもらったか、いつできるようになったかを尋ねるアンケート調査を行った。次に同じく6項目の実技調査を行い、最後にできたか否かとできなかった理由を尋ねた。調査は2011年7月に実施し、有効回答率は93.8%(男子89.6%、女子100%)であった。
【結果】
(1)アンケート調査
 「できる」と回答した生徒の割合が、玉結び、玉どめ、なみ縫いでは80%以上、ボタンつけでは65.8%と高く、布目の方向、まつり縫いでは35%以下と低かった。誰から教えてもらったかを複数回答で尋ねたところ、玉結び、玉どめ、なみ縫い、まつり縫い、ボタンつけにおいて「学校:家庭科」という回答が最も多く75%以上を占めた。布目においては、「習っていない」という回答が最も多く41.3%であった。また、いつできるようになったかを尋ねたところ、すべての項目において「小学校」との回答が最も多かった。
(2)実技調査
 布目では、54.7%の生徒が「適切」であった。しかし、アンケート調査では「できなかった」という回答が73.3%あることから、布目の判断はできていないと考えられる。
 玉結びでは、53.8%が「適切」であった。「不適切」と評価されたものは、玉結びにループがあるものであった。
 玉どめでは、51.6%の生徒が「不適切」であった。「不適切」と評価されたものは、玉どめにループがあるもの、布からの位置が離れているものであった。
 なみ縫いでは、82.7%の生徒が「不適切」であった。「不適切」と評価されたものは、針目がやや長い(0.5~0.7cm)ものや長い(0.8cm以上)もの、針目の間隔が不均等なもの、糸こきがされておらず布が縮んでいるものであった。
 まつり縫いでは、96.0%の生徒が「評価不可能」であった。「評価不可能」と評価されたもののうち56名が「かがり縫い」を行っていた。
 ボタンつけでは、58.7%の生徒が「不適切」であった。「不適切」と評価されたものは、ボタンの裏や脇にループがあるもの、ボタンの糸がゆるいもの、布とボタンの間に糸が巻けていないもの、布との間に浮きがないものであった。
 これらの結果から、小・中学校で学習する基礎的な被服製作技能は主に「学校:家庭科」で学習されており、家庭科での指導が重要であることが分かった。玉結び、玉どめ、なみ縫い、ボタンつけにおいては、名称は認識されていたが技能は習得できていないということが明らかとなった。まつり縫いにおいては、名称・技能ともに習得されていないことが明らかとなった。

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