抄録
研究の目的
現代の日本では,これまでの終身雇用制度が崩れ,契約社員などの非正規雇用者が増加してきている。これらの人々は,限られた収入をやりくりしながら生活をしている。北海道地区においても,不安定な収入で生計を立てている人もいる。したがって,限られた収入の中でどのように生活設計をしていくか,生活の自立の立場から,計画的な金銭の使い方や持続可能な社会の構築を目指し,環境に配慮した消費生活を行うための知識を身につけさせたいと考えた。また,平成24年に消費者教育推進法が定められ,消費者が自分の消費行動と社会・環境との結びつきを考えて,商品を選択できる能力が求められている。
中学校家庭科学習指導要領では,「D身近な消費生活と環境」において,(1)家庭生活と消費,(2)家庭生活と環境について学ばせることとされている。家庭科ではこれまでも,消費者教育を基軸にし,消費者トラブルの防止やその対処方法を指導することが多かった。そこで本研究では,中学校家庭科において,生徒に計画的な金銭の使い方や,環境に配慮した商品選択について考えさせる授業を実践し,生徒がどのような観点に注目し,理解を深めていったのかを明らかにすることを目的とした。
研究の方法
授業対象者は北海道K市N中学校3年生85名であり,授業実践時期は2013年2~3月である。授業は全8時間で計画し実施した。授業計画は,第1次「消費生活について理解する」(1時間),第2次「自分にあった商品選択や購入場所・購入方法を考える」(2時間),第3次「支払い方法について知り自分にあった支払い方法を考える」(2時間),第4次「家計簿のつけ方について知りそのよさを考える」(1時間),第5次「消費者としての権利と義務について考える」(2時間)であった。授業分析としては,授業実践を記録したビデオを基に生徒の発言や呟きを起こしたプロトコルとワークシートの記述内容を用い,生徒の学びについて検討した。
研究の結果
お小遣いをもらっている生徒は全体の約7割であり,お小遣いの金額は2,001~3,000円が最も多く40%,次に501~2,000円で31%であった。従ってお小遣いを持っている生徒の約7割が,3,000円以下であることが分かった。またお小遣いの使い道は貯金が最も多く,高額な商品,例えばゲーム機やゲームソフトなどを買うために貯金をしているようであった。しかし欲しいものが自分の貯金金額を超える場合には,お金が貯まるまで待つ生徒よりも,親や兄弟,祖父母などにお願いをして不足分を補っている生徒の方が多いという現状も明らかになった。このような生徒の実態を踏まえ,冷蔵庫を選択することをストーリー仕立てにしたワークブックを作成し,授業実践を行った。
生徒は,冷蔵庫を選択する時に,まず金額に注目をした。その後,グループでの話し合いを行う中で,容量,年間使用電気代,年間消費電力などの商品選択の視点を増やしていった。さらに,冷蔵庫の支払い方法を学ぶ中で,収入と支出のバランスを考えることに及んだ。ローンを組んだ場合には,購入額よりも多くの金額を支払わなければならないことを知り,自分の収入や予算金額から計画的に購入計画を立てなければならないことを理解していた。また,商品の性能比較をすることから,販売金額だけでなく,購入後にかかる経費としての電気代,さらには排出する二酸化炭素量などにも気づき,環境に配慮した商品を購入することが必要であることも理解していた。