抄録
<目的>
グローバル化の進展が著しい現代社会において,人材の育成は最重要課題であり,教育をめぐる改革のスピードが増している。2006(平成18)年,中央教育審議会は「今後の教員養成・免許制度の在り方について」を答申し,教職に関する科目として「教職実践演習」の導入を提言した。この科目は,教育実習を終えた最終学年の後期に開設することとし,教員に必要とされる最低限度の基本的な資質能力を修得させることを目的としている。そのため,「教職実践演習」の履修にあたりその前提条件として,それまでの学修を記録する「履修カルテ」の作成が義務づけられた。
そこで,本学では,幼稚園・小学校・中学校・高等学校の各教諭、栄養・養護教諭など多様な免許状の教員養成を担い、しかも教職課程履修者数が多いことに鑑み,教員養成教育推進室を中心に検討を進め,幼稚園教諭を主免許とする学科を除く教職課程履修者を対象に「履修カルテ」として「教職eポートフォリオ」を導入した。システム構築から運用3年目を迎えた2012(平成24)年度に,教職eポートフォリオの導入初期段階における実態を把握するため学生を対象とした第一次調査を実施した。そのうち,家庭科履修者の特徴を明らかにすることを目的とする。
<方法>
1. 対象者:T女子大学3年生 教職課程履修者415名(内、家庭科免許状取得予定者79名)
2. 調査時期:2012年6月
3. 調査方法:集合調査;調査配票数415名、有効票412、有効回答回収率99.3%
4. 研究方法:
a.調査項目について,家庭科履修者の結果を単純集計する。
b.さらに,就業意志との関係についてクロス集計を行い、本学における家庭科履修者の特徴を把握する。
c.導入初期段階における教職eポートフォリオの効果と課題について考察する。
<結果>
1.教職eポートフォリオの作成は、「学修の振り返り」と「学修目標の設定」に約8割、「将来の進路」や「成績評価への関心」に約5割の学生が効果ありと肯定的に評価している。
2.これらの効果を教職への就業意志で比較すると、「必ず就きたい」と強い意志を持っている学生は、「教員としての資質力量形成」「学習意欲の向上」「成績評価の向上」で高い割合を示している。
3.教員に求められる能力の獲得については、「教育実践力」と「課題探求力」を除き、約6割の学生が肯定的に評価している。
4.各能力指標を教職への就業意志で比較すると、「必ず就きたい」と強い意志を持っている学生は、「学校教育についての理解力」「教科・教育課程に関する知識・技能」「教育実践力」「課題探求力」の獲得が著しく高いことがわかった。
5.教職への就業意志が大きく関与するのは、教職eポートフォリオ作成の効果としては「教員としての資質力量形成」であり、獲得能力では「教科・教育課程に関する知識・技能」であった。学修開始から2年を経た段階での一つの傾向として把握される。
6.その他の効果として、学修を振り返るだけでなく、自分自身を振り返り見つめなおす契機となったことである。
7.教職への就業意志のない学生は、教職eポートフォリオの作成による達成感も、教員に求められる能力の獲得にも否定的評価の割合が高い結果となった。