抄録
【目的】 近年、教員養成と教職課程の在り方等について精力的に審議がおこなわれおり、実践的指導力をいかにして養うかが課題とされている。模擬授業は、教員養成の課程において有用性の高い学習方法として取り入れられてきている。家庭科教員養成においても、模擬授業を取り入れた授業実践の効果や相互評価を取り入れた模擬授業実践の有効性などが先行研究で指摘されており、その多くは教員養成系大学における実践となっている。そこで、本研究では、教員養成系大学ではない私立大学における模擬授業実践の記録をもとに、模擬授業の実践方法および相互評価の活用の課題について検討を試みた。
【方法】 2012年度後期に開講された家庭科教育法Ⅳ(受講者女子29名)において実施した模擬授業の評価コメント用紙による相互評価の記録をもとに分析をおこなう。評価コメント用紙には、内容(ねらい・難易度)、学習内容の活用、指導方法(学習方法・教材教具の工夫)、板書のしかた、教師の話し方に関する10項目の5段階評価および、「この授業の良い所」「もう少し改善した方がよいと思う所」の自由記述欄が含まれている。 模擬授業は3~4名1グループで、高校生向けの家庭科の授業について指導計画の立案をおこない、内1名が教師役となり10間の模擬授業をおこなった。90分で7グループが模擬授業を実施している。「指導計画の立案」→「模擬授業の実施(1回目)」→「模擬授業のVTRおよび評価コメントによる振り返り・改善点の検討」→「同一テーマによる模擬授業の実践(2回目)」→「2回目模擬授業のVTRおよび評価コメントによる振り返り」の流れで授業を進めて行った。評価コメントによる振り返りでは、上記10項目の5段階評価を点数化しレーザーチャートを作成し振り返りに活用させている。本研究では、7つの模擬授業実践の相互評価の記録を分析対象とする。
【結果と考察】 1回目模擬授業の振り返りをおこなう際に、家庭科の授業を行う上で大切だと思う項目の習得状況を4段階でたずねると、どの項目についても、半数以上の学生が、ほとんど身に付いていないまたは身に付いていないと自己評価していた。これまで、授業実践を経験した学生はほとんどおらず、どの学生も、自分の教授技術について強い不安感を抱いている傾向があることが伺えた。
板書の仕方や話し方、教具の使用などの教授技術については、1回目、2回目の両方で、良かった点・改善点として指摘の多い項目であり、模擬授業の振り返りを通して、改善し問題点を克服しやすい内容となっていた。教授技術に関する改善の成果は、レーザーチャートの比較でも確認でき、授業実施者にとっても改善の達成を実感しやすい項目となっていた。声のトーンや生徒への目線など教師としての態度についても、相互評価における指摘はVTRを通して確認することで、2回目の模擬授業で改善につながっていた。
授業内容、学習方法、教材・教具の工夫などの授業構成力については、1回目の模擬授業における改善点としての指摘が目立。また、授業内容の難易度は、1回目、2回目ともレーザーチャートで「高校生の家庭科の授業としては、内容がやさしい」という方向に寄ってしまう傾向に大きな変化は見られず、改善点として「やさしすぎる」という指摘がある一方で「難しすぎる」という指摘も登場しており、学校段階や生徒の発達段階に応じた適切な授業内容を設定する力が不足していることがわかった。
10分間という限られた時間ではあるが、学生は、同一テーマによる2回の模擬授業実践を行うことで相互評価をもとに教授技術や教師としての態度の改善点に気づき課題を克服することはできるが、学習者に適した学習内容の難易度を判断し設定できる力を付けさせる必要性があることが課題としてみられた。