抄録
<目的>
小学校では、各学級の担任の教員が担当学級の全教科を教えることは一般的であるが、家庭科は小学校でも専門の教師が教える場合も多く、そのような場合、全教科を担当する教員に比べ、他教科の指導との連携や関連づけがなされない可能性がある。
現行の小学校学習指導要領から家庭科には「身近な消費生活と環境」という領域ができた。従来、家庭科では環境教育はなされてきてはいたが、学習指導要領に「環境」とはっきり示されるようになったことに加え、教育基本法や学校教育法の改正により、学校教育全体を通してより一層環境教育を推進していくことが期待されている。
そこで、小学校教育全体の中で取り上げられる環境教育と、家庭科の環境教育の関連を明らかにすることを目的に、学習指導要領および検定教科書について以下の調査を行った。
<方法>
1.文部科学省における環境教育の定義および小学校学習指導要領における環境教育に通ずる箇所を明らかにするため、小学校学習指導要領と解説の中にある環境教育に関する部分をリストアップした。その際、文科省サイトに示される「環境教育指導資料」を参考にした。
2.小学校で教えられている各教科の教科書の中で、上記の環境教育に該当する部分について調べた。対象となったのは生活科、社会科、理科、体育科、家庭科である。
3.1.2.の結果を踏まえ、各教科の教科書の中に見られる環境に関する具体的記述の比較を行った。調査対象は生活科を除く全ての検定教科書で、具体的には社会科(第4学年と第5学年、各5社)、理科(第3学年と第6学年、各6社)、家庭科(第5・6学年、2社)、体育科の保健(第3・4学年、5社)の計29冊であった。
<結果>
1.現行の学習指導要領の中にみられる環境教育に触れている部分は、道徳教育、生活科、社会科、理科、体育科、家庭科、総合的な学習の時間、特別活動、であり、何らかの環境教育に関する言及があった。小学校教育全体において環境教育がなされている現状が窺われた。
2.生活科、社会科、理科、体育科、家庭科の各教科の指導内容で具体的に環境教育に通ずる部分について、家庭科ではD「身近な消費生活と環境」領域が新たに設けられたが、他の教科では、生活科では身近な自然環境との関わり、社会科では第4学年、第5学年で地域社会や産業と環境との関わり、理科では第3学年と第6学年で生物環境や生態系について、体育科では保健の分野で第3・4学年で生活環境と健康に関する学習が行われており、教科書の記載分量は社会科が最も多かった。
3.教科書の内容を詳細に比較した結果、教科別では、特に社会科に環境に関する単元が多くみられ、理科については生態系に関する単元が主で他には多くみられなかった。小学校教育全体の中では社会問題としての環境教育が多くを占めている現状が窺われた。また家庭科には環境問題を扱う領域が新設されたが、環境教育自体はAからDの全領域を通して行われていた。なお家庭科で学習する生活の物理環境(温熱、空気、日照)に関しては、同様の学習が保健の学習で第4学年までに行われており、関連づけの必要が推察される。
<まとめ>
小学校の教育課程では家庭科だけでなく、様々な教科等を通して環境教育がなされており、体系化・関連づけの重要性が示唆された。また、小学校の環境教育全体のなかで家庭科は、小学校で多くなされている社会問題としての環境教育(主として社会科)と、サイエンスとしての環境教育(主として理科)の橋渡し役としての位置づけが可能である。