抄録
【目的】
現在は、共働き世帯の増加、核家族の増加、塾、習い事に通う生徒の増加などから家族のライフスタイルが変化している。働く環境については、過重労働から育児・家事と仕事の両立の困難な状況が続いており、このような状況に関連してワーク・ライフ・バランスが注目されている。他方、新卒採用の離職率の増加、フリーターの増加なども問題視されている。将来の職業設計と学校教育との関わりについては、平成20年に改訂された新学習指導要領で、キャリア教育の目標として教育活動全体を通して現在及び将来の生き方を考え行動する能力・態度の育成が強調されている。技術・家庭科の家族分野においては、「これからの自分と家族」が新しく付け加えられた。つまり、今の自分や家族だけではなく、これからの自分と家族、これからの生活に展望を持つということが重視されたということである。将来の生活を考える時に、家庭生活と仕事の両面を考慮に入れることが求められる。そこで本研究は、中学校家庭科教育の家族分野においてワーク・ライフ・バランスとキャリア教育の視点を含めた授業を開発して実践し、授業前後のアンケートを実施することで授業の有効性を確認することを目的とした。
【方法】
徳島県内の公立中学校であるM中学校3年生とN大学附属中学校1年生の生徒、合計101名を対象に、2回の事前観察を行った上で事前アンケートを実施し、2011年10月下旬から11月上旬にかけて授業実践を行った。また、授業の終了時に事後アンケートを実施した。アンケート用紙は授業実践の内容に即して「家庭での自分の役割や仕事」「これからの自分と家族」「将来設計」「ワーク・ライフ・バランス」の4分野15項目で作成した。そして、15項目中、授業前後で共通している質問の11項目について、授業前と授業後の差をt検定により明らかにした。その結果と授業の中で使用したワークシートを基に授業の有効性について分析し、改善案を検討した。
【結果および考察】
(1)M中学校
授業前後で共通している11項目中、「家庭での自分の役割や仕事」は1/2項目、「これからの自分と家族」1/3項目、「将来設計」3/3項目、「ワーク・ライフ・バランス」0/2項目有意差がみられた。「ワーク・ライフ・バランス」はt検定で有意差はみられなかったが、自由記述から授業前後の変化がみられた。また、授業の目的はワークシートから達成できたことがわかった。
(2)N大学附属中学校
授業前後で共通している11項目中、「家庭での自分の役割や仕事」は2/2項目、「これからの自分と家族」1/3項目、「将来設計」3/3項目、「ワーク・ライフ・バランス」は0/2項目有意差がみられた。「ワーク・ライフ・バランス」はt検定で有意差はみられなかったが自由記述から授業前後の変化がみられた。また、授業の目的はワークシートから達成できたことがわかった。
これらの結果は、授業のポイントとしてロールプレイング、ワーク・ライフ・バランスを考える活動、私の未来家族図という活動をしたことで、現在の自分と家族から将来の自分と家族を一連して考えることができたからであると考えられる。
以上の結果からある程度の有効性が確認できた。しかし、アンケート調査、ワークシート、授業の様子から1年生と3年生では授業内容を変える必要があると考えられた。授業改善案として第1学年を対象とする家庭の仕事分担、ワーク・ライフ・バランスを中心にした授業案と、第3学年を対象とする将来の家族設計を中心にした授業案という学年を考慮した別々の授業案を提案することができる。