抄録
目的
全国の中学校から生徒が入学する高校で勤務し、5年が経過した。被服実習や調理実習を取り入れた授業を高校2年生の「家庭基礎」で実施している。
しかしながら、毎年、授業を実施する際、中学校での実習経験の差が大きいためか、生徒の進度差が大きいことを実感する。全国の中学校から入学していることもあり、それぞれの中学校での授業実施内容に差があるのではないかと感じた。
本研究では、家庭科の学習内容・実習内容に差があるかを調査し、その調査結果をふまえ、授業が円滑に実施できるように検討することを目的とする。
方法
2013年2月~4月にアンケート調査を実施した。
神奈川県A高校全校生徒約900名を対象に、高校生の段階で中学校時に学習したことを想起させて回答させた。
本校生徒の特性
全国の中学校から生徒が入学し、全寮制の男子高校である。そのため、日常生活における洗濯やアイロンかけなど身の回りのことはすべて生徒たち自身が行う。
1日の日課に沿った生活を日々送っており、生活においての指導が行われている。
結果及び考察
1 出身都道府県
八地方区分に分けてみたところ、一番多い地域は九州地方約30%、次いで関東地方約20%中部地方約15%の順となった。また各都道府県別にみると北海道や福岡県、熊本県などの出身者が多い傾向にあった。
2 実習室及び実習の有無
調理室はどの学校もほとんど保有していたが、被服室は80%の充足率であった。また、調理実習は約90%、被服実習は約80%、保育実習は約50%の生徒が経験していることが分かった。保育実習に関しては実施日数から判断すると、職場体験として参加しているものも含まれていると推測できる。
3 各分野の学習経験状況
(1) 食物分野
「献立作成」を除いて約90%の生徒が学習したと回答した。
(2) 被服分野
「衣服の目的」「衣服製作」は約50%であり、そのほかの項目に関しては約70%の生徒が学習したと回答した。
被服実習は約80%の生徒が参加したと回答しているが、「衣服製作」は約50%の生徒が実施したと回答していた。この差の原因は、被服分野の中の「衣服の簡単な修理」や保育分野の中の「おもちゃ作り」を被服の実習と考えている生徒がいるためと考えられる。
(3) 住居分野
「住まいの働き」「快適な室内環境」は約60%、「安全な室内環境」は約50%の生徒が学習したと回答した。
(4) 保育・家族分野
保育分野の中で「幼児の心身の発達の特徴」については最も多く取り上げられており約70%であった。家族分野では「家庭生活と地域の関わり」に関しては約40%であった。
(5) 消費・環境分野
消費・環境に関する分野においては約70%の生徒が学習したと回答した。
まとめ
食物分野に関しては約90%の生徒が学習したと回答したが、他の分野は約40~70%と経験の少ない項目もあった。学習経験に差がある生徒たちに授業をするにあたり、中学校の積み重ねができない学習内容がある。また、「家庭科を好きではない」と回答した生徒は実習に対して消極的な参加であることが明らかとなった。
中学校での学習経験が高校の家庭科教育に及ぼす影響があると考えられる。限られた高校での授業を実施するためには、生徒に身につけさせたい能力をふまえ、どの部分に焦点をあて授業実施したらよいかを検討する必要がある。
今後の課題
アンケート結果において「実習室がない」「実習を行っていない」「家庭科の先生がいない」という意見が少数だがあった。昨年の家庭科教育学会パネル・ディスカッションでも中西氏が「中学校家庭科教員実態調査」の中間発表において「専任教諭が少ない」「免許を持っていない教員が授業を実施している」という現状が報告された。
今後は、中学校の教員の現状と地域ごとの生徒のアンケート結果を比較し、学習経験の差は教員の現状と関連があるのかを検討したいと考えている。