抄録
【目 的】 高等学校学習指導要領の中で、各教科にわたる指導計画の作成と内容の取り扱いにおいて、食に関する指導は家庭科の特質を活かし「食育の充実を図る」ことと明記されている。高校生は、進学して一人暮らしを始める者、社会人となるものと進路も様々であるが、「食の自立」を促す時期として、成人男性の肥満率上昇や女性の痩身率上昇の基礎となる悪習慣がつく時期としても非常に重要と考えられている。現状を正しく認識し、正しい知識の上で将来の「食の自立」を目指し、いつでも行動変容できる要素を身に付けさせ正しく改善できるという効力感や実践力につなぐ意欲を持たせる食育の展開を検討し、意識変容を目指していきたいと考える。さらに生活習慣病は、今日の国民的課題といえるが、これまで高校家庭科の授業では、生活習慣病予防という視点があまり取り入れられていない。しかも、普通科目「家庭基礎」の授業時間数が少ないことを考えると、食育の中でも生活習慣病予防に特化した食教育プログラムの開発が必要であると考え、高校「家庭科」の授業における食育の展開を実践していくことを目的とする。 【方法】1 小・中・高における食育の体系化を図る。(1)小・中学校での食育の状況調査を行う。平成24年度「家庭基礎」履修者147名を対象に、小・中学校で受けた食育の内容とその学習について調査する。(2)高校家庭科での、新学習指導要領における食生活分野の学習内容の確認・整理を行う。(3)他教科での食育関連の内容調査として、保健体育・地歴公民・理科等を対象に聞き取り調査を行う。2 食生活分野で生活習慣病予防に視点をおいた食育プログラムの開発を行う。(1)高校家庭科の食育の役割を明確にし、生活習慣病予防に視点をおいた食育プログラム(案)の一覧を作成する。(2)課題提起型学習による学習指導案を作成する。(3)食育プログラム(案)を用い、共同研究者の勤務校で検証授業を行う。その結果を分析し、食育プログラムの改善を図る。 【結果】(1)小・中学校での食育状況調査の結果、学習した内容で覚えているものは、五大栄養素といった知識よりも調理実習(クリスマスケーキやおせち料理など)や餅つき、芋ほり、田植えなど体験した内容が非常に多く、また、記憶されている内容数は個人差というよりも学校間による学習の差が大きいといえる。(2)食育プログラムの開発にあたっては、小・中・高の食生活に関する学習内容の系統性や他教科との関連性を図り、体験的・視覚的効果を持つtoolを活用した課題提起型学習を取り入れた。授業は1時間1テーマとし、全22時間の食の授業のうち写真レシピ集「ワンプレートのカフェごはん」を使った調理実習(50分)を4回組み入れた。(3)平成24年度にA校で検証授業を行い、25年3月に一年間を振り返ったアンケート調査を行った。その自由記述による調査では、1年間の学習の中で印象に残った授業として食生活分野をあげる生徒が最も多かった(88.9%)。そのうち75%の生徒が調理実習をあげ、体に悪影響を及ぼす食習慣や生活習慣病など健康に関する内容をあげた生徒は28%であった。また、「レシピ集を今後も使っていきたい」といったレシピ集に関する記述も多くみられ、基礎調理力を身に付けるのに有効な教材であることを改めて確認した。今後も検証授業を重ね、本研究の成果を明らかにしていきたい。「ワンプレートのカフェごはん」は、筒井、林田、加藤、井上が開発したものである。(日本家庭科教育学会誌Vol.53-1April2010授業実践のひろば)