日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第56回大会・2013例会
セッションID: P28
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56回大会:ポスター発表
家庭科授業中に行う包丁技能の指導の提案とその効果
*河村 美穂
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抄録
研究目的
   調理技能の中でも包丁を使う技能は、生徒にとって料理ができると実感する重要な技能である。先行研究においても包丁指導の効果については多くの知見が示されている。しかし、家庭科の授業時数が削減される中にあって調理実習の実践回数は減少傾向にあり、包丁技能の習得は期待できないとする考え方もある。
  そこで、本研究では通常の中学校の家庭科授業において可能な包丁指導の方法を提案し、この指導を受けた生徒が何をどのように学んだのかを明らかにすることを目的とする。具体的には、食生活領域の授業の一環として冬季休業前後に2回の包丁指導(兼調査)を行い、その効果を多面的に検討するものである。
研究方法
 公立中学校1年生36名(男子17名女子19名)を対象として、食生活領域の学習に1.包丁の使い方(リンゴの皮むき・調査1)2.冬季休業中の皮むき課題 3.フルーツポンチをつくる実習(含リンゴの皮むき・調査2)を組み込み、包丁技能の定着を図った。事前事後で簡単な質問紙調査を行い、1.3.の授業記録及び2の課題記録からも可能な範囲でデータを収集した。1.3の授業では包丁を使う場面を録画し、技能の定着の様子を分析した。さらに、リンゴの皮むきの結果をデジタルカメラで撮影しデータとして収集した。データ収集に際しては、研究目的とともに事前に生徒に説明し了承を得て行った。実施時期は、2012年12月~2013年1月である。
結果と考察
 本研究は通常の家庭科の授業の中で包丁技能の習得が可能となるような方法を提案するものである。この方法の特徴は、(1)「切る」ではなく「剥く」技能に特化したこと(2)1時間調理を1か月の間隔で2回行い包丁技能の定着を図ったこと(3)2回の授業に加えて冬季休業中の課題で包丁技能の定着を図ったこと(4)デジタル機器を生徒自身に操作させ記録をとり技能の状態を意識化させたこと、である。
 本研究で設定した1.包丁の使い方(リンゴの皮むき・調査1)と3.フルーツポンチをつくる実習(リンゴの皮むき・調査2)との2つの調査結果について、すべての結果がそろった32名分について比較してところ以下のようになった。
(1)廃棄率は調査1で15.7%、調査2で17.7%と高くなった。
(2)動画記録で上達したと判断した生徒は15名、技能の状況が変わらないと判断した生徒は15名、下がったと判断した生徒は2名であった。
(3)調査1と調査2の間に行った冬季休業中の課題実践後のアンケートでは上達したと回答したものは27名であった。
(4)同じくアンケートの自由記述感想に「自身の技能の変化」を記述したものが11名あった。
(5)包丁技能を学んでできそうと思う料理は全体で83(1人平均2.3)が挙がった。このうち、主として包丁を用いる料理(サラダなど)は34、包丁を使って煮る・ゆでる料理(カレーなど)は21、包丁を使って炒める料理は12となり、包丁技能が上達したと思うことによって、包丁を使う以上の技能を要する料理もできると思うようになることがわかった。
 本研究では、動画記録の技能分析結果と生徒自身の感じる上達感の関連について検討を加えたが、実際には上達したと認められない生徒も上達したと回答している場合があり、すべての生徒の包丁技能を日常生活で使用可能な状態にまで定着させることは難しいということがわかった。ただし、技能の上達の側面だけではなく、料理に抵抗がなくなること、様々な加熱調理もできそうと思うことがその後の調理経験を増やしていくことにつながるのではないだろうか。
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© 2013 日本家庭科教育学会
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