抄録
<目的> 学校教育における問題解決能力の育成は重要な課題となっている。問題解決能力は、問題を的確に把握し、子どもがこれまでに身につけた知識、技術、経験などを総合し、情報を収集・分析するなどして、現実的な解決策を立案・実行する総合的な能力であるといえる。家庭科は生活における問題解決能力を育成する教科として、学習の充実を図ることが求められている。子どもの問題解決能力の個人差を縮め、すべての子どもに問題解決能力をつけていくことは教育の課題であり、生活を学ぶ家庭科学習の役割と可能性は大きいといえる。本研究は、子どもたちが自ら課題を見つけ、自ら学び、主体的に判断し、よりよく問題を解決できる資質や能力を育成することの重要性に着目し、食品の買物を通して、子どもの日常生活における問題解決の実態と課題、問題解決能力への影響要因を明らかにすることを目的とする。
<方法> 長野市および近郊の小学校4校の5・6年生を対象に質問紙調査を実施した。 本調査は2つの部分からなり、ひとつは、スーパーでの買物風景ビデオを視聴して、問題点を自由に記述してもらい、各自が記述した問題の解決方法を自由記述式で問うものである。これは、問題解決の初めのプロセスは「問題の認識」であり、教師から一方的に与えられた問題の解決だけではなく、自ら課題を見つける力を把握するためである。二つ目は問題解決能力に影響を与えている要因を分析するために、「基本属性」(性別、学年、家族構成など5変数)、「買物に関わる知識」(食品の取り扱い、品質表示の2変数)、「家庭生活」(家族との会話、身辺自立など6変数)、「生活実態・意識」(関心事、友人関係など10変数)、「情報活用」(メディアからの情報収集頻度)の5要因に関して尋ねた。 調査は2010年9月に実施し、有効数は517名である。
<結果> 1.対象者の属性は、5年生50.9%、6年生49.1%、男子46.2%、女子53.8%であり、核家族70.2%、拡大家族29.8%である。家族人数は4~5人が51.0%を占めている。また、きょうだい数は2人が最も多く53.2%である。 2.ビデオ視聴から「あれ、おかしいぞ」「問題だな」と思ったことの自由記述については、計画的に買う力、新鮮な食品を選ぶ力、品質表示を確かめて判断する力、食品を適切に取り扱う力、その他気付いたことを得点化して問題認識得点とした。0~6点に分布し、平均3.3点であった。各自が記述した問題の解決方法については、問題認識の観点と同様に、4つの項目ごとに「具体的記述あり」「抽象的記述のみあり」「記述なし」の3段階で得点化した。0~8点に分布し、平均4.5点であった。以上の問題認識得点と解決方法得点を合計して問題解決能力得点とした。0~14点に分布し、平均7.7点であった。分析では、この得点を従属変数とした。2.「基本属性」「買物に関わる知識」「家庭生活」「生活実態・意識」「情報活用」の各要因ごとに問題解決能力に影響を与えている変数を検討した。「基本属性」では性別が有意に影響しており、男子よりも女子の方が問題を認識したり、解決を具体的に導いていく力が高い。「買物に関わる知識」では、食品の取り扱いに関する知識が身についている児童の方が問題解決能力が高いことが明らかになった。「家庭生活」では、買物頻度、親との会話頻度、生活自立度が影響を与えており、家族とのコミュニケーションが問題を認識したり、具体的に問題を考えたりする力に影響を与えていた。また、家事の手伝いを多くしている児童の方が問題解決能力が高い傾向にある。「生活実態・意識」では、人間関係能力が影響しており、日頃から人と関わろうとすることや、問題を解決する時に、お互いの意見を聞き、納得するまで話合おうとする意識が高い児童ほど問題解決能力が高いことが明らかになった。