日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第56回大会・2013例会
セッションID: 1-4
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2013年度例会:口頭発表
実践的推論プロセスに基づく米国家庭科の授業
-地域と連携した「食」の問題解決プロジェクト-
*鈴木 真由子荒井 紀子綿引 伴子
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抄録
【目的】
   生活に関わる諸問題を学習題材として、生活を改善したり問題を解決したりする力、すなわち問題解決リテラシーを育むことは、家庭科における重要な学習目標のひとつである。米国では、問題解決リテラシーを育む学習理論として「実践的推論プロセス(Practical reasoning process)」が開発されてきた。オハイオ州は、この理論に基づくカリキュラム開発とその実践の普及に積極的に取り組んできた代表的な州の1つである。
   本研究では、米国の実践的推論プロセスが、実際の授業において具体的にどのように展開されているのか、また、授業実践と実践的推論プロセス理論はどう関係するのかについて明らかにする。
【方法】
1.2012年10月1日及び10月3日、米国オハイオ州Bellefontaine 高等学校にて、家庭科の授業参観
2.授業後、授業者Marybeth Motasem氏へのヒアリング(昼食をはさんで60分程度)
3.2013年7月7日、国際シンポジウム(大阪大学中之島センター)「生活者を育てるスウェーデン、アメリカの教育 ~子どもの思考を引き出し,問題解決力をつける家庭科~」におけるMarybeth Motasem氏のプレゼンテーション(実践的推論プロセスに基づくアメリカの家庭科)及びシンポジウム内容の検討
4.シンポジウムの前後(7月6日、7月9日、7月13日)に、報告者Marybeth Motasem氏とのディスカッション及びヒアリング(総計90分程度)
【結果および考察】
1.授業の概要
1)日時:2012年10月1日、3日各1授業時間(80分) 
2)対象:10年生(一部上級生を含む)21人(男子13人・女子8人) 
3)科目:フード1(選択科目)
4)単元名:ファミリー・ディナー・チャレンジ・プロジェクト
5)テーマ:「実在の家族のリクエストに応えて食事を提供する」
6)内容と生徒の目標
 高校近隣の実在する6家族に夕食を提供することを目的として、家族の健康上のニーズや家計を考慮し、献立を作成し、コスト計算を経て食材を選び、実際に調理して家族に提供する。またルーブリックを使って学習課程を分析・評価する。次の3つの条件を満たすことが生徒の学習の目標であった。
(1)5つの食品群の食品を含む食事をつくる
(2)家族の食事上の問題に応じて食事内容を決定する
(3)家庭の予算内に収まるレシピを選ぶ
2.授業の考察
・毎日連続して設定されている授業時間が、学習の継続性を生み出していた。
・生徒が実践的推論プロセスのステップを理解しやすいように工夫された「REASONモデル」(R=問題を認識する、E=情報を評価する、A=選択肢とその結果を分析する、S=最善の選択肢を選ぶ、O=行動の計画を立てる、N=授業成果を記録する)を意識して、生徒に問題解決のプロセス(学習のプロセス)を自覚させていた。
・ルーブリックを生徒と共有し、15分程度で前週の振り返りを実施していた。提出されたレポートはルーブリックに沿って評価し、コメントをつけて返却することで学習効果につなげていた。
・生徒の生活実態を地域社会の実情としてとらえ、具体的な課題に落とし込むことで切実感を伴う解決すべき問題として学習につなげていた。
・地域の資源を巧みに収集し、賛同者を募り、授業協力者として支援を受けていた。それが問題解決のリアリティとうまく結びつき、生徒の学習意欲を喚起する効果につながっていた。
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© 2013 日本家庭科教育学会
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