抄録
〈緒言〉食は人間が生きていく上で最も基本的な欲求の一つであり、一人ひとりが食生活を自己管理して健康を守り、さらに文化に根ざした食生活を創り上げる能力を育成することは極めて重要である。また、大学生は一人暮らしを始めるものが多く、自ら食事を選び、準備をする食生活管理能力が求められる。しかし、実際には炭水化物を主とした食事を摂っていることが多く、それによりビタミンやミネラル類の摂取不足などが生じており、食生活管理能力が十分に備わっているとは言い難い状況である。そこで、本研究では、大学の生協食堂を利用する1年生を対象に、アンケート調査によって、食生活の実態や現状などを把握し、今後の家庭科における食生活に関する学習のあり方について検討することを目的とした。
〈研究方法〉1.調査対象:島根大学の1年生の中で生協食堂のミールカードを利用する376名(男子279名,女子97名)。2.調査方法:大学の生協食堂主催のミールカード説明会で質問紙法によるアンケート調査を実施した。 3.調査日:大学の生協食堂主催のミールカード説明会が行われた、平成25年4月8、9日。4.調査内容:高校までの家庭科の学習態度、食生活についての学習内容、学習内容の活用場面、食事を選ぶ基準、食生活観、食生活に関する知識の定着度など。
〈結果及び考察〉1.高校までに受けてきた家庭科の学習態度について回答を求めたところ、「とても意欲的であった」と「やや意欲的であった」を合わせると、男子は61.2%、女子は82.9%、逆に「あまり意欲的ではなかった」と「全く意欲的ではなった」とは、男子が38.1%、女子は15.2%であり、男女間には学習態度に違いが見られ、女子の方が意欲的であったことが理解できた。2.高校までに食生活についてどんな内容を学習したのかについては、「調理実習」、「栄養素について」と「食事の役割」の3項目は60%以上であり、特に「調理実習」は76.5%と高く、実践的な学習であるため、学習を行ったという記憶が残りやすいものと考えられる。3.食生活について学んだことを、生活のどのような場面で活用しているのかについて回答を求めた。最も多かったのは男女ともに「料理を作る」で、次いで「料理を作るための買い物」であった。しかし、最も多い回答でも半数を下回っており、学習したことを実際の食生活において活用している学生はそう多くないということが明らかとなった。4.普段外食を行う際、何を基準に料理を選ぶのかについて回答を求めた。最も多かったのは、男子が「値段」で、女子は「好み」であった。最も重視する項目は男女で違ったものの、両項目とも男女ともに50%以上であり、「値段」と「好み」は食事を選ぶ重要な基準であることが分かった。5.どのようなことを心がけて食生活を営んでいるのかの、食生活観を明らかにするため、食生活を営む上で重要な項目を10取り上げて、5段階評定尺度で得点化した。最も得点が高かった項目は、男女ともに「栄養・健康を重視することは大切である」であり、男女差はほとんどなく、栄養・健康を何よりも重視している学生が多いことが明らかとなった。6.家庭科で学習してきた食の知識に関する問題4問について回答を求めた結果、全問正答は男子19.0%、女子22.7%であり、男女間ではそう大きな差異はなかった。全体的にみて、全問正答者が少なかったことから、食に関する知識の定着度は十分でないことが明らかとなった。
〈まとめ〉高校までの家庭科の学習において、学習態度は女子の方が意欲的であり、男女間に差が生じていた。調理実習については、学習したというものが多かったためか、実際の生活にも活用される割合が高かった。また、栄養・健康を重視する食生活観をもっているものが多かったが、学習してきた内容を現在の生活に活かしている学生は総じて少なかった。したがって、食生活をより豊かなものにするために、学習したことをもっと生活に活用できるよう、学んだ知識を活かせるような授業を工夫していく必要がある。