日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: B3-6
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第57回大会:口頭発表
高等学校家庭科における社会形成能力を育成するカリキュラムの開発
―地域の教育資源の活用を通して―
*段吉 真由美鈴木 明子
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抄録
【目的】
 高等学校家庭科においては,社会とのかかわりの中で営まれる家庭生活や地域生活への関心を高め,生涯を見通して生活を創造する主体としての学びを可能にするカリキュラム開発が求められている。個としての生活自立だけではなく,社会に働きかけ,自分達の社会を創りあげようとする力の形成は,家庭科における能力形成にとって重要である。先行研究として,鎌田・山田(2007),石島(2012),荒井(2011)の研究があるが,地域の教育資源の活用および継続的に他者とかかわる学習活動を含んだ継続的な実践の提案はみられない。そこで,本研究では,地域の教育資源の活用を取り入れ,生徒の主体的な学習による社会形成能力の育成を志向したカリキュラムを提案し,その学習効果を検証することを目的とした。
【方法】 
  「人間関係形成・社会形成能力」育成の下位目標を探るために,生徒の認識変容の観点を系統的に整理し,第1段階から第4段階の下位目標および最終的にめざす段階を設定した。第1段階は,他者とのかかわりを通して自分や他者に対する興味・関心をもつ段階,第2段階は,周囲の人々とかかわる経験を重ね他者の考えや価値観を理解し受け入れる段階,第3段階は,主体的に行動するための意思決定を行う段階,第4段階は,他者や家庭,地域社会に対して働きかける段階であり,最終的には,社会の一員として他者と共に将来の生活を創造する段階をめざす。生徒の変容をとらえるために下位目標別に,計31の調査項目を設定し,評価指標とした。さらに,「家庭総合」4単位1年間のカリキュラムを構想し,広島県立S高等学校1年家政科1クラスの生徒を対象に実践し,社会形成能力の育成に及ぼす学習効果を検証した。
【結果および考察】
 学習指導要領の目標や内容との関連を図り,大項目「(2)子どもや高齢者とのかかわりと福祉」を核としたカリキュラム構想の実現に向けて校内調整をおこない,行政や関連施設,同窓会にかかわり,地域人材発掘をおこなった。地域の高齢者(同校の同窓生)や保育園児との複数回にわたる交流をおこなうとともに,小グループで自己の考えを明確に表現する,互いの考えを深めるなどの学習活動を充実させた。  
 社会形成能力の変容をとらえる調査において,各質問の回答を平均値として得点化し,4月と10月の得点差を分析した結果,「周囲の人との信頼関係を築くことは重要である」,「周囲の人の長所や個性が分かる」,「話し合いで自分の意見を述べることができる」の項目に有意差または有意傾向がみられた。他者と関係を築く学習活動を継続して実施したことが,得点の向上につながったと推察される。また,「解決策を見つけるために,多くの情報を集められる」,「重要な決定の結果,起こり得る可能性を考えることができる」,「自分の役割を果たすことができる」,「自分の役割以外のことにも取り組むことができる」の項目にも有意差または有意傾向がみられた。これらは,身近な高齢者や子どもとの交流,ホームプロジェクト,調理実習などの学習活動による効果であると推察した。第2,3,4段階では,ほとんどの項目で平均値の上昇がみられたが,第1段階では,その傾向がみられなかった。このことから,本実践の対象者には直接,自己を見つめさせる学習展開より,第2,3,4段階をめざした働きかけを通して,自己を見つめさせる方法が有効であることが示唆された。
 提示したカリキュラムの中で,生徒が,個人から,家族,地域,社会へと徐々に視野を広げ,それらと自分との関係性をとらえ,積極的に社会形成しようと意識を高めていく様子がうかがえた。社会形成能力を短期間で育てることは難しいが,カリキュラムの工夫によって変化をみせることが示唆された。
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© 2014 日本家庭科教育学会
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