日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: B4-2
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第57回大会:口頭発表
家庭での家事経験が家庭科を学ぶ意欲に与える影響についての検討
*蟹江 教子
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抄録
1.研究の目的
 家庭科は,日常生活に必要な基礎的・基本的な知識や技能を学ぶ教科であり、「生活者のわざ」「食のわざ」「共に暮らすわざ」に代表されるミニマム エッセンシャル・ライフ スキルを習得することを目標としている(牧野 2009)。家庭科で学ぶ内容は、長い人生を生きていくうえで必要な知識や技能が多く含まれており、生活に密着した諸現象を対象にしている。
 子どもたちが教科として家庭科を学習するのは小学5年からであるが、毎日の生活に関係した内容が教科としての特徴であるため、家庭科を学ぶ意欲や意義をどう考えるかは、家庭環境、特に保護者の意識や家庭での家事経験が大きく関係していると思われる。そこで、家庭での家事経験が、子どもたちの家庭科に対する意識、具体的には学習そのものの面白さである「現在的レリバンス」と、将来、役に立つという感覚である「将来的レリバンス」(本田 2004)に影響するのか、この点について検討する。

2.分析に用いたデータと変数
2.1 分析に用いたデータ
 お茶の水女子大学では2003年から2010年にかけて2つの地域(首都圏近郊(Aエリア)と東北地方に位置する市(Cエリア))に住む小・中・高校生を対象に、3回にわたって「青少年期から成人期への移行についての追跡的研究(=Japan Educational Longitudinal Study=JELS)」を行った。この調査データから、第2回調査で小学3年、第3回調査で小学6年だったAエリアの児童760人とCエリアの児童875人をサブサンプルとして用いた。
2.2 分析に用いた主な変数
 従属変数:家庭科についての学習レリバンスとして、「家庭科が好きか」「家庭科は役に立つと思うか」という2つの項目について4件法で回答を求めた(回答は小学6年時である)。
 独立変数:小学3年時と小学6年時の家庭での家事経験の指標として「食器を洗う」「包丁でものを切る」という2つの項目を用い、4件法で回答してもらった。

3.分析の結果
 「家庭科が好き」については、Aエリアで4割、Cエリアで5割の子どもが「好き」と回答しており、若干の地域差は認められたが、家庭科を好意的に評価している子どもが多かった。
 「家庭科は役に立つ」については、Aエリア、Cエリアともに9割を超す子どもたちが「役に立つ」「どちらかというと役に立つ」と回答しており、家庭科の有用性を認めていた。また、どちらの質問についてもジェンダー差が認められ、Aエリア、Cエリアともに男子よりも女子のほうが「好き」あるいは「役に立つ」と回答していた。
 家庭科に対する意識と家庭での家事経験との関係については、小学3年時に家庭で食器を洗ったり、包丁でものを切ったりする経験が多い子どもほど、家庭科の学習レリバレスは高い傾向を示していた。小学6年になると両者の関連はより密接になっており、家庭科の学習レリバンスが高い子どもほど、家庭での家事経験も豊かであった。

4.さいごに
 これまで、家庭環境が子どもの成長や発達、さらには地位達成に影響することは繰り返し検証されてきたが、家庭科においても例外ではなく、家庭科の履修が始まる以前、小学3年時の家事経験が、小学6年時における家庭科の学習レリバンスの形成に関係していた。子どもが家事をすることに対する考え方は家庭によって異なる。家庭に起因する影響を考慮しつつ、学校での授業を展開することが必要だろう。

引用文献
本田由紀,2004,「学ぶことの意味」,苅谷剛彦,志水宏吉編,『学力の社会学』,岩波書店.
牧野カツコ責任編集,お茶の水女子大学附属学校家庭科研究会著,2009,『家庭科の底力 作る手が子ど もたちを輝かす』,地域教材社.

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© 2014 日本家庭科教育学会
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