抄録
<目的>
現在の子どもたちに生活経験の不足していることは、しばしば指摘されている。家庭科は生活に関連する様々な領域の知識の習得だけでなく、実践を伴う教科であり、小学校家庭科においても実習は重視されている。食生活領域においての調理実習も児童にとっては、大事な実践の場であるが、近年調理実習の時に教師が調理器具を指示しても、児童が該当する器具を選択することができないことがある、ということが学校現場から指摘されている。これは子どもたちの経験不足も関係しているためであると考えられる。また、調理の基本である食材の切り方の名前もわからない、という指摘もある。そこで、今回小学生が一般的な調理器具等と食材の基本的な切り方の名前をどの程度知っているのかについて調査を行った。
<方法>
広島大学附属M小学校の5年生79名(男子38名,女子41名)を対象として、2013年10月にアンケート調査を行った。切り方は、基本的なもの15種類の図を、また調理器具等は、日常使用されている道具31種類の写真を示し名前を記入させた。切り方への回答は、75名(男子35名、女子40名)で、調理器具等への回答は、7 4名(男子34名、女子40名)であった。
<結果>
調査した15種類すべての切り方で、平均正答率は男子12.6%、女子19.5%と女子の正答率が男子を上回っていた。切り方別では、男女別に正答率の高い1~5位を見ると男子では、1位「みじん切り」2位「せん切り」3位「いちょう切り」4位「輪切り」5位「半月切り」であり、女子では1位「みじん切り」2位「いちょう切り」3位「せん切り」4位「輪切り」5位「半月切り」と「さいの目切り」であった。男女ともに「みじん切り」が1位となったが、この切り方は教科書には掲載されていないため日常生活のなかで得られた知識であることが推察される。正答率の上位にきている切り方は、最も基本的な切り方であるとともに教科書にも掲載されているため正答率の高かったことが考えられる。一方、男女ともに正答が0であったのは、「小口切り」「そぎ切り」「色紙切り」「拍子木切り」であった。誤答としては、「小口切り」では「ねぎ切り」、「そぎ切り」では「ななめ切り」「スライス切り」、「色紙切り」では「四角切り」「正四角形切り」、「拍子木切り」では「直方体切り」「ぼう切り」「短冊切り」などが見られた。特に「色紙切り」「拍子木切り」のように名前の由来となっている「色紙」「拍子木」を、児童が知らないことが答えられなかった大きな原因ではないかと考えられる。
調理器具等の名前についての正答率の平均は、男子27.9%、女子36.1%と女子の方が高かった。正答率の1~5位は、男子では1位「包丁」2位「フライパン」3位「まな板」と「やかん」5位「ボウル」となり、いずれも80%以上の正答率であった。女子では1位「フライパン」2位「やかん」と「包丁」4位「まな板」と「ボウル」でいずれも90%以上の正答率であった。男女ともに正答率の高かったのは「包丁」「まな板」「フライパン」「やかん」「ボウル」とすべて基本的な調理器具であり、多くの家庭で所有されていることから、物と名前がしっかり結びついていることが認められた。一方、男女ともに正答率0だったのは、「おろし金」「みそこし」「水切りかご」「茶たく」「蒸し器」「土瓶」「裏ごし器」「網じゃくし」「穴あきお玉」であった。これらは家庭で使用することが減少してきている調理器具であるため、実物を見る機会のないことが正答率0の原因であろうと考えられる。