抄録
【はじめに】
子どもたちの生活技能や家庭の教育力の低下により、家庭科の学習効果を高めるためには現行の時間数では不十分である。また、衣生活などに関する生活技能は生涯にわたって必要なものであり、それらは家庭科教育で教えている内容が多い。そこで、本研究では家庭科教育を修了した市民と大学生を対象に、今後の衣生活学習内容について検討するために、現在の学習内容について、その有用性と期待を明らかにすることを目的とした。
【方法】
1.調査時期および調査対象 2013年9月~11月に実施した。対象は、あるイベントに参加した市民63名(30~70歳代)と、一人暮らしの大学生(概ね20歳)123名とした。
2・調査内容および方法 アンケート調査によった。調査項目は、生活実態・裁縫の技能や学習経験・家庭科の学習に関する「有用性(生活の中で役に立っているか)」と「期待(もっと学びたかったか)」に関する6項目とした。各調査項目における「有用性」と「期待」をはかるために、「生活の役に立っている」や「もっと学びたかった」割合が高い順に9点から1点を与え、同じ割合は同点とした。
【結果および考察】
1.「有用性」 市民の有用性は、「基本的な裁縫技能」6点(80.0%)、「布地の特徴」5点(36.0%)、「被服の手入れの仕方」5点(36.0%)、「被服の選び方・買い方」3点(22.0%)、「TPOに合わせた衣類の着方」2点(20.0%)、「衣生活文化」1点(16.0%)の順で高くなった。大学生では、「基本的な裁縫技能」6点(77.2%)、「被服の手入れの仕方」5点(40.7%)、「布地の特徴」4点(30.9%)、「TPOに合わせた衣類の着方」3点(20.5%)、「被服の選び方・買い方」2点(16.3%)、「衣生活文化」1点(12.2%)の順で高くなった。これより、有用性の総ポイントは市民210.0、大学生197.8、平均ポイントは市民35.0、大学生33.0となり、市民の方が大学生より高くなった。
2.「期待」 市民の「期待」は、「被服の選び方・買い方」6点(22.0%)、「被服の手入れの仕方」6点(22.0%)、「衣生活文化」4点(20.0%)「TPOに合わせた衣類の着方」3点(18.0%)、「布地の特徴」2点(14.0%)、「基本的な裁縫技能」1点(6.0%)、の順で高くなった。大学生では、「被服の手入れの仕方」6点(35.8%)、「基本的な裁縫技能」5点(29.3%)、「布地の特徴」4点(19.5%)、「被服の選び方・買い方」3点(18.7%)、「TPOに合わせた衣類の着方」2点(16.4%)、「衣生活文化」1点(11.4%)の順で高くなった。これより、「期待」の総ポイントは市民102.0、大学生131.1、平均ポイントは市民17.0、大学生21.9となり、大学生の方が市民より高くなった。これには、両者の生活経験の違いが影響したと考えられる。
3.衣生活学習の充足の度合い 市民と大学生の「期待」の合計点から「有用性」の合計点を引き、その得点差を「学習の充足の度合い」とした。その結果、「衣生活文化」4点、「被服の選び方・買い方」4点、「被服の手入れの仕方」2点、「TPOに合わせた衣類の着方」0点、「布地の特徴」-3点、「基本的な裁縫技能」-6点となった。これより、得点差がマイナスの項目は「現在の学習で充足されている内容」、0から+2の項目、は「もう少し学習が必要である内容」、それ以上の点数の項目は「もっと学習が必要である内容」と考えた。「衣生活文化」は、大学生の「期待」が最も低かったことと、市民では地域の被服に関する伝統文化への興味・関心などにより得点差が大きくなったと推察したが、家庭科以外の教科でも学習することから、家庭科では「もっと学習が必要である内容」とすることについて検討する必要があると考える。