日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: A1-7
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第57回大会:口頭発表
ニューデリー日本人学校の家庭科指導
-児童・生徒の家庭生活の実態調査から-
*池﨑 喜美惠
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抄録
【目的】
 学齢段階の海外に在住する児童・生徒は、平成24年度は約67,000人にのぼり漸増している。特に、アジア圏の日本人学校に在籍している児童・生徒は約16,000人と多数を占めている。本研究では、インドに開校されているニューデリー日本人学校の家庭科指導の現状を明らかにする。また、日本人学校で学ぶ児童・生徒の家庭生活の実態から、海外で生活する上での問題点を探り、家庭生活を対象とする家庭科指導のあり方を考究することを目的とした。
【方法】
 2013年7月にインドに設置されているニューデリー日本人学校を訪問した。家庭科室等の施設・設備の実地踏査や小学部の家庭科の授業を参観し、家庭科教員に日本人学校における家庭科指導の現状についてヒヤリングを行った。そして、小学部第5・6学年、中学部第1~3学年の児童・生徒91名を対象にインドにおける家庭生活の現状や家庭科について、質問紙調査を実施した。調査期間は2013年7~9月、調査の概要はインドでの日常生活の様子や生活状況の評価、家庭科学習に対する意識、家庭科観などである。
【結果及び考察】
1)インドには、2校の日本人学校が開校されている。そのうちの1校であるニューデリー日本人学校は全校児童・生徒数約260名の大規模校である。ニューデリーから約20kmの距離に位置し、住宅街の一区画に設置されている。中庭を囲んだ教室配置となり、1階にある家庭科室には実習に必要な用具等が整備されていた。しかし、ガスボンベを各調理台にセットして使用する状況や調理台が不足しているなど施設・設備の整備・充足が必要といえる現状であった。これは、2006及び2010年度に実施した教員対象の学校調査からも表明されていた実態であった。
2)現地採用の家庭科教員は、小中学部を一人で指導しており、児童・生徒がインドでの生活を消極的に受けとめ、インド料理やインドの生活環境を享受していないととらえていた。このことは児童・生徒のインドでの暮らしについての調査結果から、家族のつながり(60.5%)についてのみ満足感が高く、買物(48.4%)や食生活(49.5%)への不満足度が強いことからも判明した。また、インドで生活したことを家庭科の学習に役立たせようという意識は低かった。このような児童・生徒の実態をふまえて、家庭科では現地理解教育の観点から、チャイをつくる、チャパテイーをつくる、カレーをつくる、サリーを着るなどインドの身近な生活を体験させるような家庭科指導を試みていた。
3)児童・生徒の家庭は、高学歴の親や専業主婦の母親、保護者の活発な社会的活動など、他の国の日本人学校の児童・生徒の家庭と概ね類似していた。家庭内の仕事を手伝っているかを3件法で尋ねたところ、「食後のかたづけ」のみ約52%が「よくする」と回答していた。9割の児童・生徒の家庭では、家庭内の仕事を行う人を雇用しているため、欧米の日本人学校の児童・生徒の実態とは大きく異なっていた。
4)児童・生徒は家庭科に対し「男女ともに学習する必要がある(83.9%)」「生活に関連の深い教科である(78.2%)」「生活に必要な技術の学習をする教科である(74.7%)」「毎日の生活に役立つ(72.4%)」ととらえていた。また、家庭科学習に対する意欲は高く、調理実習の楽しさを強く感じていた。
5)現地のインターナショナルスクールと交流を図り、日本文化を伝えたり、英語圏のためミニ留学をするなど現地理解を図っているが、前述のとおり、児童・生徒のインド生活への適応はかなり難しいことが明らかとなった。したがって、滞在国や地域により児童・生徒の生活に対する意識や異文化に対する認識に大差があるため、現地で家庭科を指導する場合、如何に滞在国の生活実態を児童・生徒に理解させ、エスノセントリズムに終わらせない指導をするかが大きな課題といえる。
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© 2014 日本家庭科教育学会
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