日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: P25
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第57回大会:ポスター発表
空間的要素を取り入れた高校生向きキャリア教育の検討
グループ討議を生かして
*福田 典子
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キーワード: 空間, キャリア, 高校生
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抄録
【目的】近年の教育課題の一つにキャリア教育がある。15歳~24歳の失業率が2010年に11%を超え、大学卒業者の離職率は4割という値もあり、我が国の持続的発展の上で、極めて深刻な事態と認識されている。これらの実態を踏まえて、学校教育において将来を見据えて、専門的職業人として、また地域の良き市民として協同的に活躍できる知性や感性を育てることが重要である。家庭科では、家庭生活を中心とした生涯につながる人間の基礎的な力や技能を身に付けることが期待される。家庭科におけるキャリア教育に関して、これまでの指導内容をみると、女子生徒に対して経済的な金銭運用力の育成が、男子生徒に対して性役割固定概念払拭や家事・育児・介護等の役割意識の育成を目的としているような取り扱いが多いように見受けられる。そこで、本研究では、一層両性の生徒のために性差を超えて生涯に渉る能力の基盤となる指導内容を検討した。金銭と時間の管理力にとどまらず、それらに空間を加え、空間・金銭・時間の観点での各々の自己の分配に関して、PDCA力を高めることを目標とした教材・授業を構想し、実践を行い、その効果や課題について明らかにすることを目的とした。【方法】生徒の職業観や勤労観に関する意識を類推するために、高等教育に在学する学生の仕事に対するイメージを調査した。また、これまでの指導を把握するために、小中高校家庭科教科書におけるキャリア教育の指導内容の取扱いの特徴を調査した。さらに、他教科や他の学習活動との関連性や家庭科の役割を鮮明にするために、小中学校における「道徳」等における「働くこと」の取扱いの特徴を調査した。以上の調査結果から得られた知見をもとに、本教材の指導内容では、スマート(SMarT)に自分の未来をつくるとして、空間(SPASE)・金銭(MONEY)・時間(TIME)の3つの要素を抽出し、キーワードとすることに決定した。さらに、本授業では、OPEN QESTIONにし、グループ討議を導入することにより、生徒相互の議論を深め、創造的思考力を高めることを重視して設計した。具体的学習目標を空間・金銭・時間の分配力や調整力に対する関心・意欲の高揚として授業を行った。授業は、長野県内在住の高校1・2年生を対象として、異なる高校で複数回実施した。本教材・授業の学習の可能性や課題を、作成されたワークシートおよび授業後の生徒の感想文から推察・考察を行った。【結果】①大学生および専門学校生は、仕事に対して、夢、生きがいなどの正のイメージよりも、どちらかといえば、リストラ、パワハラなど負のイメージを持っている様子がうかがえた。②高校教科書では収入よりも、消費の側面が多く扱われていること、また、生活設計では就職と結婚が並列的に取り扱われていることなどの問題点が確認できた。③他教科や他の学習と家庭科の学習との比較により、家庭科では配分力やその調整力を知識・理解の基本とする役割を担うべきではないかと考えた。④授業研究を行った結果、3つの要素の中では「時間」を選んで、作業・議論する班が多かった。時間配分はこれまでの学習経験が多く、最もわかりやすい内容であることが明らかとなった。一方、空間移動や空間配分に関しては、これまでに経験したことのない課題だったために、時間配分に比べて、わかりにくい様子であった。授業者の指導技術も不足していたが、その学習指導方法やワークシートに改善の余地があることが明らかとなった。しかしながら、生徒の感想より、適正な「収納率」と「移動距離」の学習により、空間管理力は時間や金銭の管理能力と並び、また深く関わって、自己管理能力の要素として、生涯にわたり重要なことや、自己管理により能率や効率が上がり、自己実現などを図り易くなる点を学んだことが確認できた。さらに、自己確立こそが家族や地域住民等の他者への理解や支援的・協同的行動の原動力になることを学んだ様子が伺えた。  
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© 2014 日本家庭科教育学会
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