日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: A1-1
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第59回大会:口頭発表
高校家庭科における高齢者学習の効果比較
*増田 菜実鈴木 真由子
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抄録
1.研究目的

日本は少子化とともに高齢化の進行が続いており、2013年の高齢化率は25.1%(内閣府平成26年度版高齢社会白書)となっている。この超高齢社会では、制度や設備の整備とともに人々の意識の改革も重要と考えられ、多くの研究がなされてきた。先行研究では、高齢者との接触経験や学校での学習が、高齢者イメージに影響すると述べられている。しかし、若い世代と高齢者との日常的な交流は減少してきていると推測され、学校教育、中でも家庭科がより重要となると考えられる。

そこで本研究では、大阪府立高校における家庭科の高齢者学習の実態を明らかにするとともに、高齢者理解を深めるために有効な授業の要素について検討する。

2.研究方法

(1)高齢者学習の実態を明らかにするために、大阪府立高校(全96校)の教科「家庭」平成27年度シラバスから把握できる学習内容を分類、整理する。

(2)家庭科での高齢者分野の授業構成および配当時数が異なる3高校において、学習の効果を明らかにするために高校生を対象とした質問紙調査を行い、学校間ならびに授業前後で比較する。対象とした家庭科の授業は、a校:講義のみ、b校:講義・シニア体験、c校:講義・シニア体験・高齢者との交流である。参考として、d課程:「福祉」においても同様に調査を行う。調査時期は2015年6~11月、配布・回収数は授業前総計406部、授業後総計415部(各欠席者を除く回収率100%)である。主な調査項目は、高齢者に対する気持ち・行動、高齢者イメージ、年をとることへの考えなどで、授業後には「学習を終えてわかったこと・感じたこと」についても尋ねる。なお、授業の内容を把握するため、全ての授業(全27時間)を参観しビデオで記録するとともに担当教員に確認する。

3.結果および考察

(1)大阪府立高校で開講している教科「家庭」の科目は、6割弱が『家庭基礎』、4割強が『家庭総合』であった。シラバス記載の学習内容を高等学校学習指導要領を参考に5つに分類したところ、「高齢者の生活と課題」「高齢社会の現状と社会福祉」については科目を問わず多くの学校で学習されていた。「シニア体験」については約2割、「高齢者とかかわる」については約1割しか学習されていなかった。このことから、体験や交流を取り入れた学校は少なく、ほとんどは講義を中心に高齢者学習を展開していると推測される。また、約15%の学校はシラバスに高齢者分野の記述がなかった。

(2)3校(4課程)で実施した授業前質問紙調査の結果、ほとんどの項目で学校(課程)間に有意な差が認められなかった。授業前後の結果を比較したところ、高齢者に対する気持ち・行動については、c校、d課程で積極的な回答が増加した。c校は高齢者と交流したこと、d課程は看護師志望の生徒が多いことから、将来の職業的関わりを意識したことが関係していると考えられる。高齢者イメージについては、c校は肯定的に変化し、a校、b校は否定的に変化した。a校は講義によって高齢期の否定的な面が印象付けられたこと、b校はシニア体験後の振り返りがなかったことが原因として推測できる。「自分はどのような高齢者になりたいか」については、a校、c校で積極的な回答が増加した。それは、間接的(a校)、直接的(c校)に実在する高齢者を知ることで、自分の高齢期のモデルがイメージしやすくなったからではないかと考えられる。学習を終えてわかったこと・感じたことについては、b校は他の学校(課程)に比べて、自分の高齢期についての記述が多かった。高齢社会の実態について学んだあと、自分に置き換えて考えさせたことが生徒に影響を与えたと推測される。

以上のことから、授業構成や配当時数が、生徒の高齢者理解や高齢者イメージに大きな影響を与えることが示唆された。なかでも、授業における高齢者との交流や、活動の振り返りが重要であり、そのためには絶対的な時間数の確保が不可欠であると考えられる。
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