日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: B1-1
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第59回大会:口頭発表
小学校家庭科みそ汁の授業ではぐくむ資質・能力の分析
OECDとの共同による次世代対応型指導モデルの研究開発の一環として
*大竹 美登利藤田 智子
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抄録
背景と目的:文部科学省は1998年の学習指導要領から「生きる力」の育成を掲げ、「確かな学力」「豊かな人間性」「健康・体力」を目指し、「思考力」「判断力」「表現力」という教科横断的スキル育成を重視してきた。これらに一定の成果はあったが、思考力や判断力のとらえ方が教師で異なったり指導力がばらつく問題もあり、アクティブラーニング重視の学習指導要領改訂も進められている。
こうした中で教科横断的スキル・キャラクターの育成課題を分析することは、OECDが構想するEducation 2030のビジョンに貢献すると考える。そこで東京学芸大学は「OECDとの共同による次世代対応型指導モデルの研究開発」プロジェクトを立ち上げ,各教科の授業分析を行い、日本で育成されるコンピテンシーとOECD Education 2030で提案される21世紀コンピテンシーとの関係を吟味し、その育成を構造化した21世紀型指導モデルの開発をめざす。
本報告ではその一環として行った小学校家庭科のみそ汁の授業を分析し、そこで育まれるスキルとキャラクターを明らかにする。

方法.教科教育担当の大学教員23名が授業で育成されるスキルやキャラクターを提案し、それをKJ法で15に絞った後、小学校教員500名を対象としたweb調査で、各教科で育成されると考えるスキルやキャラクターを抽出した。.家庭科授業研究会のメンバーによる協議で、育成すべきスキルやキャラクターを育む授業計画を立てた。.授業計画にそった授業実践をビデオ収録し、プロトコルや子どもの取り組み姿勢を分析し、そこで育まれたスキルやキャラクターを明らかにした。5年生3クラスを対象に、各クラス前方、広報、教師の動きと8班のうちの6班の子どもの様子を計9台のカメラで撮影し分析した。また、単元後に各クラス6人の児童ならびに担当教師をインタビューし、分析に加えた。なお本報告では資質能力の育成が明示的に表れた一人をとり取り上げる。

結果及び考察.汎用的スキルは「(ア)批判的思考力」「(イ)問題解決力」「(ウ)協働する力」「(エ)伝える力」「(オ)先を見通す力」「(カ)感性・表現・創造の力」「(キ)メタ認知力」が、キャラクターは「(ク)愛する心」「(ケ)他者に関する受容・共感・敬意」「(コ)協力し合う心」「(サ)より良い社会への意識」「(シ)好奇心・探究心」「(ス)正しくあろうとする心」「(セ)困難を乗り越える力」「(ソ)向上心」が抽出された。評定平均値が高い傾向にあった家庭科で身につくキャラクターは、他教科の比較では(サ)のみで、家庭科の中では(ウ)(オ)(カ)(コ)(シ)(サ)であった。
.各2時間続き3回を単元としたみそ汁の調理を対象とし、1次は試し調理で、班で話し合って煮干しやみその量を記録して調理し、最後に各班の味比べをする。2次では味噌や出汁の働きを確認するため、煮干しと味噌の量などを変えた4種類に限定して飲み比べさせる。3次では2回の授業をふまえて班ごとに最もおいしいと考えるみそ汁の作り方で調理した。
.典型的に取り組みが変化した児童Aには以下のような姿がみられた。1次では話し合いで「分からない」を連発し、自分の意見を他者から否定されると「そ~」と言って引き下がり、積極的に関われなかったが、他の班のみそ汁と飲み比べをして、みそ汁の作り方のポイントに気づき始めた。2次の4種類のスープを飲み比べで、味のポイントを理解し、班でみそ汁の作り方を話し合う場面では、班員の意見が分かれた時に調整するなどリーダーシップを発揮し、積極的に関わっていた。3次では煮干しのはらわたをとる作業で手分けして行うことを提案したり、率先して味噌を溶くなど、自信や積極性が表れていた。またインタビューでも煮干し以外の出汁の違いに関心を示し、自分でみそ汁を作る意欲を述べるなど、好奇心や探究心が育成されていたことが確認できた。
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© 2016 日本家庭科教育学会
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