日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: B2-1
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第59回大会:口頭発表
高等学校家庭科における住居領域の授業実践
指導者の違いに着目して
*速水 多佳子
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抄録
【目的】
家庭科は生活全般を学習対象としており、限られた時間数の中で幅広い内容を取り上げて授業を実践していかなければならない。特に住居領域については、他の領域と比較して授業時間数が少なく、扱いが低調であることがこれまでに報告されている。その理由としては、学習素材が教室に持ち込みにくく、指導に必要な教材や資料が不足していること、生徒の興味・関心が低く、そのために教員にとっても手応えがなく指導を敬遠する要因となっていることなどがあげられる。
近年、学校における教育の情報化が推進されている。ICT活用により、生徒の学習意欲が高まることや効率的に教材を表示することで、時間を有効に使えるようになることが報告されている。住居領域の指導上の課題を解決する方法の一つとして、ICTを効果的に活用することがあげられる。ICTによって学習対象を教室内に取り込んで生徒に提示することができ、興味・関心を引き出すことが可能となることが考えられる。そこで、ICTを活用した住居領域の授業案を作成し、高等学校において実践を行って、その効果を検証することを目的とした研究を行った。その中で、同じ教材を使用した授業を教員経験の異なる2名の家庭科教員に実践してもらい、指導者によって、授業の前後で生徒にどのような意識の違いが出るかに着目して分析を行った。
【方法】
住居領域の授業は、県立A高等学校普通科1年生「家庭基礎」において、8クラス301名(男子158名、女子143名)を対象に、平成27年1月から2月に各クラス5時間ずつ行った。授業を担当した家庭科教員は、約20年の経験がある授業実施校専任の家庭科教諭と週に3日間勤務している非常勤講師の2名である。この2名の教員が4クラスずつを担当し、専任の教諭が担当したクラスをA(男子82名、女子70名、計152名)、非常勤講師が担当したクラスをB(男子76名、女子73名、計149名)として、クラス間の違いを比較した。授業は教科書とプリントを用いて、ICT機器(電子黒板と書画カメラ)を部分的に活用しながら行った。住居領域の授業前後における生徒の意識を、アンケート調査を実施して比較した。調査内容は、住居領域の学習内容の理解度と学習意欲、住居領域に対する意識(重要度、興味・関心、役立ち感等)についてである。
【結果】
学習内容の理解については、教科書に太字で書かれている語句を抜き出し、使用頻度の高いものを内容ごとに分類して20項目を選び、それぞれについて5段階(詳しく説明できる、ある程度説明できる、少しは知っている、聞いたことはある、知らない)で尋ね、平均値と標準偏差を算出した。すべての項目で、学習による理解の深まりが見られ、特に「動線」「コレクティブハウジング」「起居様式」の数値が上昇した。学びたい内容については、同じ20項目から複数回答可で選択を求めたところ、授業前後ともに、「地震対策」「快適な住居の条件」が多かった。
住居領域に対する印象を5段階(とてもそう思う、そう思う、どちらとも言えない、あまり思わない、思わない)で尋ねたところ、「興味・関心がある」は、授業前の平均3.38から授業後3.57、「今後の生活で役立つと思う」も、授業前4.15、授業後4.23と上昇し、特に役立ち感は授業前の段階から強い。
教員による違いをAとBのクラス間で比較すると、学習内容の理解と学習意欲は、授業前の段階でAクラスの方が全体的に数値は高い傾向が見られたが、各クラスを授業前後で比較すると、どちらも同程度の違いであった。しかし、住居領域に対する意識(他と比べて重要、興味・関心、役立ち感)については、Aクラスは授業前後で高まりが見られたのに対して、Bクラスは変化が見られなかった。
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© 2016 日本家庭科教育学会
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