日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: B2-7
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第59回大会:口頭発表
ジェンダー平等と家庭科教育の課題―ワーキングマザーの学生時代の調査から―
*森田 美佐
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抄録
【目的】
本研究の目的は、子どものいる働く女性(ワーキングマザー)が、学生時代にもっていた将来の職業生活や家庭生活についての知識、考え、経験と、現在の働き方を明らかにした上で、職業生活と家庭生活におけるジェンダー平等のために、家庭科でどのような学びが必要かを検討することである。

【方法】
調査対象者は、末子が小学生までの女性雇用者1000人とし、調査はインターネットリサーチ会社を通してWEB調査を行った。調査項目としては、学生時代のこととして「将来の職業生活や家庭生活の知識、考え、経験」「将来のライフコース」、現状として「現在のライフコース」「経済的自立意識」、属性として「年齢」「学歴」「子ども数」「雇用形態」「年収」等をたずねた。

【結果】
1. 30代までは、中・高卒の人はその他の人よりも、学生時代に雇用形態について詳しくなかったが、
現在は非正規雇用に就いている割合が高かった。一方、40代以上、中・高卒、大卒・大学院卒のいずれかに当てはまる人で、学生時代に、将来の自分のライフコースに何らかの理想があった人は、なかった人よりも、現在は正規雇用に就いている割合が高かった。

2.短大・専門学校・高専等卒と大卒・大学院卒の人は、高卒の人よりも、学生時代に、将来の職業キャリアに対して主体的に考え行動する傾向が見られた。

3.学歴や年代に関係なく、学生時代に、近代家族の概念に基づいた家庭生活を送ることが理想と考えていた人は、そうでない人と比べて、現在でも「夫の収入が高ければ仕事をやめたい」と考える傾向が見られた。

【考察・結論】
第1に、高校生までに家庭科で、非正規雇用の働き方や生活を知る機会を更に増やす必要があると思われる。本研究では、非正規雇用で働くワーキングマザーの割合が、大卒以上よりも中・高卒に多い傾向が見られたが、彼女たちが高校生までの段階で、非正規雇用についてあまり知らない傾向は軽視できない。

第2に、高等学校において、女子生徒が、いかなる形態であっても将来の働き方や生き方を具体的に描く学習が必要だと思われる。高校生の段階から、将来どのようなライフコースを選びたいのかを考えることは、子どものいる働く女性の、不本意ながらの非正規雇用の選択を防ぐ可能性もあると思われる。

第3に、現状は子育てしながら働く女性でも、彼女たちが学生時代に性別役割分業意識をもっていると、女性側に、夫婦が共同で家計を運営する意識や個人単位としての経済的自立意識は育ちにくいと考えられる。女性が自身の就業継続は夫の経済力次第と考えるならば、たとえ女性の就業率が上昇しても、女性が主体的に職業キャリアを描く機会は制限されるばかりでなく、男性も「稼ぎ手役割」から解放されないだろう。

家庭科は、男女が性別役割分業意識にとらわれない生き方についての学習を提供してきたが、それでも性別役割分業を肯定する若年女性は存在している。女性が社会に出る前に、「どのように生きたいか」「その夢の実現にはどうすればいいのか」を考えることと同時に、「その生き方は相手の生き方の幅(自由)を狭めないか」も考えることが、ジェンダー平等の実現には重要と思われる。
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© 2016 日本家庭科教育学会
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