日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: B3-3
会議情報

第59回大会:口頭発表
グローバル社会に対応した家庭科教師の専門性と方略
*望月 一枝齋藤 美重子川村 めぐみ松岡 依里子大本 久美子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【研究目的】 本研究の目的は、グローバル社会に対応した家庭科教師の専門性と方略を解明することである。グローバル社会の特徴を池野(2014)は、社会システムが個々人の生活世界に入り込み、「システムに植民地化される」ことだと指摘した。望月(2013)は、グローバル社会をジェンダー、持続可能な社会、シティズンシップの概念で見直すこと、多様な選択肢が広がる一方、リスクも伴うので、「食べる」、「着る」、「育つ・育てられる」、「住まう」、「家族」などの「生きるための学習」が重要性を増すと提示した。同著で、井元(2013)は、生産から廃棄までの食生活をトータルで考えること、葭内(2013)は、消費者教育で「背景」への眼差しを育てること、倉持(2013)は、幼児理解と豊かな養護性を社会とのかかわりで考えること、天野(2013)は、家族の変化や多様性を客観的・構造的に把握し自分の育った家族以外の家族モデルを知ることをあげている。しかし、同著及び先行研究においても、社会の変容に伴う家庭科教師の専門性と方略は充分に解明されていない。 【研究方法】 1.家庭科教師と共に、グローバル社会を意識させる授業をアクションリサーチし、授業カンファレンスを持つ。具体的には、公立高校の消費のA授業(2015年9月)、本研究グループメンバーである齊藤の私立高校の家族のB授業(2015年10月)を対象とし、授業カンファレンスを実施する。2.B授業は、西オーストラリア州立Duncreig Senior High Schoolの授業観察調査(松岡)における授業空間に関する知見、フランスLycee Professionnel Jean Monnet(職業高校)のシティズンシップ教育の家族授業観察とフランスの教科書調査(望月)から教材と方略に関する知見を得る。授業をフィールドノーツ、ICレコーダーに記録し、発話を文字に起こす。授業カンファレンスでは、苦慮した点、手応えを感じた点など、対話を通して家庭科教師の専門性と方略を析出する。3.以上をふまえて、国立教育政策研究所(2016)、コンピテンシーベイスの授業づくり(石井2015)、(奈須2015)、ディープ・アクティブラーニング(松下2015)を批判的に参照し、研究目的に接近する。 【結果及び考察】  A授業では、映像と実物(チョコレート)、B授業では、各国の出生率のグラフを用いた。授業は、どちらもグループの話し合いと一斉授業の対話を組み合わせ、生徒の参加を促していた。A授業は、教師の生徒に寄り添い深い知識と分かりやすい説明をする発話が多く、B授業では、教師が生徒同士の発話を促し、コーディネイトする発話が多かった。 A授業では、知識や活動を詰め込みすぎて、「フェアトレードのチョコレートを買うこと」が暗黙の正解となった。それは、教師がオープンエンドな生徒とのやりとりをどのように着地させれば良いか迷いがあったことが析出された。B授業では、「教える」授業から「教えない」授業への転換をする際、教師に葛藤と不安があったが、生徒の発話が活発に起こり、ジェンダーや育児制度や政策と自分の生き方と重ねる深い学習ができたことが確認できた。 家庭科教師の専門性は、メタ認知的な知識とアプローチとして発揮され、何に気づかせ、どのような命のケアの技法を身につけるかをデザインすることであった。方略は、生徒の反応を見取る教師のリテラシーと空間構成で実践コミュニティを作り、教師の即興的な発話と立ち位置で授業を再デザインしながら知識や価値観を可視化、共有化することであった。 *なお本研究は日本家庭科教育学会課題研究(1-3)による研究の一部である。
著者関連情報
© 2016 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top