日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: B4-4
会議情報

第59回大会:口頭発表
小学校高学年から中学生期における  自己肯定感獲得に果たす家庭科の働き
*古田 豊子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
目的:小学校高学年から中学生期において、家庭科が、教科の目標到達以外に果たしている働きについて明らかにし、それを意図的に指導の中に位置づけることで、子どもの自己肯定感を育むことができることを実証する。 小学校の高学年から中学生期にある子どもの特徴は、自我が芽生え、「自分とは何か」というような本質的な疑問を持つようになる。この時期の子どもは、自分に自信がもてず、不安定な状態に陥ったり、葛藤に苦しんだりする。この時期には、子どもの世界で価値があると考えられているさまざまな能力について、それを持ち合わせているかどうかという評価によって、ある種のヒエラルヒーが出来上がる。家庭科は、小学校5年生という思春期のこのような心理状態の時に、初めて出合う教科であり、家庭科がそれまでの価値基準とは違った側面で、友だちのよさを発見する機会を多く含んでいるといえる。子どもたちの生活体験が乏しくなっている現代であるから尚更、子どもたちの集団においては、生活上必要とする技能を身につけている子どもが自立した姿と映り、友だちから認められる機会を得ることになる。こうした機会を得た子どもは、それまで、自信のなさから抜け出ることができずに苦しんでいた自分を解放することができる。さらに、ここで得た自信と自己肯定感は、学習へのモチベーションを高くし、家庭科以外の学習活動全般にも発揮することになる。この側面を、家庭科の指導過程に位置づけ、家庭科の題材目標の到達とともに、自己肯定感を得られる学習過程の設定し、その可能性を明らかにしたいと考えた。
方法: 1.家庭科学習の中から、子どもが他者から認められる活動場面を特定し、どのような価値基準で評価されたのかを明らかにする。2.子どもが自己肯定感を得られる学習過程を設定した授業実践を行い、家庭科が、個人の技能習得とその評価だけで終わるのではなく、自己肯定感の醸成や学級集団づくりや学級経営に生かすことができる点を明らかにする。  製作に関する学習内容についての指導方法としては、通常、題 材の到達目標が設定され、それに向かう学習展開が順を追って立 案される。そこでは、子どもが教師の指導のもと、目標である技 能の習得をめざして製作活動を行い、作品が完成することで、学 習が終結する。しかしここでは、学習過程の中に、本研究のねら いである、家庭科の隠れた効果を引き出すための場面設定をし、 学習の成果に加える。 結果:1.については、家庭科の授業を参観し、子どもが友だちか ら評価される場面を特定することができた。 2.家庭科「小物作り」の指導について、子どもの場合は、「友だちに誉められて嬉しかった」という結果に集約されるが、これは、自分が頑張ったと思うところを認められた場合と、自分では意識していなかったところに友達が気づいてくれた場合の、両方の嬉しさがあった。また、指導した担任教師の観察からは、子どもたちの友だちへの関心が高まったり、友だちのよさに気づいたりする場面をよく見るようになったことや、学級集団としての協働意識も芽生えてきたことなども変容として捉えられている。したがって、本研究の成果として、家庭科は自己肯定感を育てることができ、家庭だけでなく、学級集団においても人間関係を育てる力となっているといえることが実証された。ちなみに、中学生が6年生の家庭科の学習に入って助言したが、中学生自身の振り返りや、小学校のときの担任の観察から、中学生も自己肯定感を得ることができたことが実証された。また、将来家庭科の指導を行う、教員養成大学の家庭科指導法の授業でも実践したところ、学生は「このワクワク感を、自分が授業するときに生かしたい。」という感想を持った。     指導者になった時に生かされることを期待している。
著者関連情報
© 2016 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top