日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: P22
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第59回大会:ポスター発表
高校生における生活のリスク認知の特徴と要因
東日本大震災の被災地調査の分析結果から
*青木 幸子
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抄録
 <目的>
   2011年3月11日から5年が経過した。東北地方の広範囲に及ぶ深い震災の爪あとは、震災復興の速度も復興計画も一筋縄ではいかず、遅滞や見直しを迫る事態となっている。そうした事態は、今なお避難生活を余儀なくさせられている人々の故郷への帰還計画の変更をも迫る結果となり、そこで暮らす人々にも疑心暗鬼を加速させ、コミュニティの崩壊は着実に進行していく状況さえ呈している。
   家庭科は日々の生活を健康に、快適に安全に営むことができる力を育成することを目標としている。その生活の営みを通してさまざまな知識・技能を習得し、生活を大切にする価値観とともに、人や環境と共生する力を育んでいくことに重点を置いている。
   災害等に関する学習は、主に住居分野において、地震対策としての建物の補強や災害時の非常持ち出し袋の常備、日常生活における事故の防止対策など、日ごろから災害に対する備えの教育を実施している。繰り返される災害に、家庭科の学習はどのように生かされたのであろうか。日常生活における危機管理とともに、日常生活を取り戻す力(生活再生力)を育成することの重要性を再認識し、生活のリスクマネジメントに係る学習内容を検討するため、東北の太平洋沿岸一帯の高校生を対象に調査を実施した。(第58回日本家庭科教育学会ポスター発表、東京家政大学大学院研究報告書「災害と生活」)
   本稿ではその調査票を活用し、災害に向き合う男女の性差に着目して分析し、学習題材の開発に役立てることを目的とする。

<方法>
1.太平洋沿岸を含む1都5県の高校生を対象に学校長・家庭科教員に依頼し、郵送法調査にて実施した。有効回収数2580票
2.前報の都県別の実態を踏まえつつ、リスクの認知及び行動、家庭科学習への要望について、男女別の特徴を把握する。
3.男女間、地域間の特性を比較することにより、リスク管理に関する学習題材の重点について考察する。

<結果と考察>
1.震災に起因する心配事のトップは「健康不安」であり、「診断・検診を受けた」のも福島県が男子(39.5%)、女子(47.9%)とも高かった。また、進路への不安は千葉県女子(36.5%)が高かった。
2.「生活欲求と課題」の認知は、いずれの分野も女子の割合が高く、家庭生活、衣食住生活の各分野において男女間に有意な差が見られた。また、地域別では青森県が男女とも高かった。
3.防災グッズの準備状況は概して低く、「準備していなかった」のは福島県59.7%(男子52.8%、女子62.1%)、青森県52.5%(男子48.8%、女子55.0%)と高く、有意な差が見られた。
4.防災へのメッセージの記載率は、男女とも青森県が90%以上と極めて高かった。家庭科学習への要望も、男子は青森県が86.8%と高く、女子は千葉県96.2%、青森県90.5%、東京都86.3%と続く。他県は、男女とも50%以下であった。いずれも男子より女子の割合が高いが、有意な差は見られなかった。
5.福島県と宮城県は複数の災害に遭ったにもかかわらず、「生活欲求と課題」の認知が他都県に比べて低かった。リスク認知の違いとして文化的・環境的要因があげられるが、災害リスクの大きかった宮城県と福島県を比較すると、防災グッズの準備状況がリスク認知の要因のひとつであることがわかった。
6.リスクの捉え方、意識、行動に関して、本データからは男女間の違いよりも地域間の違いが目立った。

 
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