日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: 2-2
会議情報

2016例会:口頭発表
衣生活への関心・意欲を高める教材開発
~一枚の布を利用して~
*志賀 たか子青木 幸子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
<目的>
  中学校の家庭科学習の目標は、実践的・体験的な学習活動を通して基本的な知識・技能を習得することにある。中学生の家庭科への関心度は、それまでの生徒自身の生活経験や小学校での学習経験の積み重ねによってある程度決まると考えられる。したがって近年の生徒の生活体験の不足は、家庭科学習への関心度を高める要因とはなっていない。それでも食生活分野に関しては、生徒の関心は高い傾向がみられるが、衣生活分野に関する関心は実技の苦手意識も含めて低い傾向にある。
 また、学習指導要領の改訂により家庭科の年間授業時間数は減少した。さらに、学校行事、総合学習などの影響を受けて家庭科の授業時数の確保はさらに難しくなっているのが現状である。
 そこで、本報告では、トピック学習の考え方をもとに、実践的・体験的な学習活動を取り入れ、少ない授業時間数の中で衣生活への関心・意欲を高めることができ、実生活で生かしやすい教材を開発することを目的とした。

<方法>
  開発した教材を用いた授業研究を2校の中学校で2年生(162名)を対象に実施した。授業研究に当たり、学校長の許可を得てアンケート調査を行った。調査は、授業前の事前アンケート「①小学校家庭科学習内容」「②中学校で学習する衣生活分野の内容について」と、授業後の事後アンケート「中学校で学習した衣生活分野の内容について」である。このアンケート内容を分析して、開発した教材の有効性について検討した。 

<結果と考察>
1、 小学校家庭科の学習内容については、「B日常の食事と調理の基礎」が「とても好き・好き」61%に対し 、「C快適な衣服と住まい」は「とても好き・好き」36%であった。中学校で学習する衣生活分野全体の事後アンケートの結果は「とても好き・好き」は58%であり、衣生活分野への関心が少し高まった。
 2、衣生活分野の実習においては個別作業が主であると思われるが、開発した2つの教材について次のような効果が確認された。

①「1枚の布を利用して体が隠せる服ができるか」の男女別グループ活動の効果として、生徒は、布を巻きつけるだけでは活動しやすいとは言えず、衣服にはボタンや留め具が必要であること、和洋の衣服の構成の違い、平面的な衣服には多くの布が必要になること等に気付き、ズボンの構成には留め具だけでは難しく、縫うことが必要であることに気がついた。
この教材は、「衣生活と社会生活の理解と目的に応じた個性を行かす着用と工夫」の中での位置づけとしたが、事前アンケートでは「とても関心がある・関心がある」は47%であったが、事後アンケートでは79%となり、関心を高めることができた。
②基本的な技能の習得と向上を目指して実生活で生かしやすい教材として「手作りくるみボタン」に着目した。この教材は、技能の定着、衣服以外の活用、安全な生活へと活用範囲を広げて考えることができる。製作した作品から、子どもから高齢者まで使えそうであるといった生徒の意見もあった。
この教材は、「中学校の衣服製作について」の位置づけとした。事前アンケートでは、「とても関心がある・関心がある」は56%であったが、事後アンケートでは64%であった。 

以上のように、2つの開発教材を題材計画に新たに位置付けて、授業研究でその効果を確認した。いずれも体験や実習を伴う学習であったが、生徒の関心が少し高まったことが確認された。アンケートから生徒の意欲にも変化が見られ、今後の学習活動に期待が持てる。
今後の課題として、グループ活動後のまとめを現在は画用紙等での手書きで行っているが、技術科と協力してICTスキルや言語活動の充実につながるよう授業展開を工夫していきたいと考える。また、さらに生徒の関心・意欲を高め、生活に生かしやすい教材開発を目指したい。
著者関連情報
© 2016 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top