抄録
【目的】
中高校生へ「食品添加物」についてのイメージを聞くと「危険」「体によくない」といった否定的なものが多い。一方、栄養機能食品やサプリメントについては「健康によい」「病気を防ぐ」よいった肯定的なものが多い。しかし、それらが何であるかわからないという疑問も多く出された。実際、食事代わりに菓子の一種である栄養機能食品を摂ることで栄養バランスのとれた食生活を送れると信じて疑わない生徒もいる。
一方で、食品には、食品表示法などの法律に基づき、原材料や注意喚起、キャッチコピーなどが記されている。それらを読み取る中で、多くの発見があり、疑問も出てくる。そこで、発見や疑問から食品添加物や健康食品とは何かを再確認し、意見共有を通して多様な価値観を受け止めたうえで、自分自身のよりよい食生活のための判断力を養う授業実践を行いたいと考えた。
【方法】
授業対象:高校2年生(約120名)
授業形態:1クラスを男女各10人ずつに分割した半学級(20名)
実施時期:2016年 9月から11月
実施内容:「食品の選択と安全性」 2回(4時間)
授業構成:以下の手順でグループワーク、話し合い、発表を行う。
1.事実確認(気づき)から、推察し、課題内容を考察する。
2.結果を発表、共有する中で、基本事項を理解する。
3.それらをもとに自分自身の食生活についての考えを持つ。
【実施内容】
(第1回目) 1時間目は「果汁入り清涼飲料水作り」と「ハム、ソーセージの添加物調べ」の実験から、原材料の確認(気づき)をし、飲料及びハム、ソーセージを定義する(課題考察)。2時間目は、加工食品の原材料から食品添加物を見つけ出す(気づき)とともに、その加工食品名を考える(課題考察)。その結果から、食品添加物の定義や目的、表示内容などの基本事項を理解し、その長所、短所、利用の背景をまとめ発表する。最後に食品の選択について各自の考えを出し、グループ内で意見交換をする(意思決定)。
(第2回目) まず、グループに分かれ、様々な食品に記載されている効能や、認可の有無などを読み取り(気づき)、医薬品、栄養機能食品、サプリメントなどに分類、それらを定義(課題考察)した。それらを発表する中で、様々な健康食品やサプリメントについて各自の考えを深め、食品選択について考える(意思決定)。
【結果および考察】
清涼飲料水作りや添加物実験は、以前から広く行われている教材ではあるが、問題解決型で授業を進行させることにより、より問題意識を持って取り組むことができた。加工食品の原材料からは、自分たちが知っているつもりで見過ごしている事がらを再認識するとともに、これらの加工食品、食品添加物とどのように関わるべきか、個人裁量の部分と消費者の権利・義務という2つの立場から課題をまとめることができた。
健康食品の授業では、特定保健用食品などには適切な対象者や利用法があり、食生活の補助といったものであることに気づく一方、健康食品には定義がないことを知り、普段見ていなかった表示からの情報取得に関心が高まった。発表に向けては分析結果を活かし、話し合いが進んだ。それらをまとめた発表では、協働の力、コミュニケーション能力とともに各自の批判的思考力や判断力なども養われた。
一連の授業を通して食品に対する認識や自分の食生活についての考えに変化が見られた。